2. 流されるな

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 ベッドに座ったことで、英司を見る目線が自然と上がる。  英司は手をちょいちょいと手招きすると、「おいで」と千秋を呼んだ。  ああ、もうやるのか。千秋は特に反抗することもなく立ち上がると、英司のそばまで寄った。そのまま英司の横に座ると、英司に手をとられ、握られる。 「あの、手を握るのは……え、わっ」  手を握るのは要求の範囲外だと訴えようとしたら、そのまま引かれて回避することもできず、ぽふっと上半身だけ英司の膝の上に倒れ込んでしまう。  これは……。まさか、英司に膝枕をされることになるとは。  横向きに倒れたため、千秋の目の前にはテーブルなどの部屋の様子が見える。しかし、振り返り気味に上を向けば、こちらを覗き込みながら微笑んでいる英司と目が合った。はあ、顔だけは本当に良い。 「なんでこの格好……」 「撫でやすいから」  嘘つけ、とも思ったが、正直向かい合ってやられるよりマシだ。  観念したようにまた顔を元に戻すと、英司の大きな手が頭に触れた。軽くわしゃわしゃと撫でられると、今度は髪を漉くように、何度も往復する。  なんだか、小さい子どもを寝かしつけるようとする時みたいだ。英司は本当にこんなことがしたかったのかとまだ疑問はあるが、撫でられるのが思ったよりも気持ち良くて、問い詰める気持ちも失せてしまう。 「気持ちいい?」 「ん……」  低く優しい声が耳を撫でる。
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