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少しうとうとしてきたところで、英司の手が止まって、離れた。あ、もう、終わりか……。
「……あれ、何してるんですか、柳瀬さん」
何か動き出した英司に気づき、千秋は起きあがろうとした。が、途中で動けないことに気づく。眠い頭が覚める。
「やっぱりこの格好じゃやりづらいから、姿勢変えるぞ」
「え、え?」
いつの間に、脇の下から回り込んだ腕が、体にきゅっと巻き付いている。
「ちょっ、何してっ」
「こら、ちょっと大人しくしてろ」
ジタバタと抵抗を試みるが、埃が立つだけで、ちっとも腕から逃げられない。ベッドは壁につくように配置されているが、英司はその壁まで後退していこうとする。
それについて行くように、英司に抱きかかえられている千秋の体も、後ろからずりずりと引き寄せられる。
ほんと、何がしたいんだこの人っ…!顔が見えないせいで余計わけがわからない。
途中もがきつつも、最終的に英司の足の間に収まり、背中に寄りかかる姿勢に落ち着いてしまった。
「はぁ……」
なんか、今のでどっと疲れたぞ。暴れたから、余計。いきなり技をかけられた気分だ。
文句言ってやる、と思い立つと、また英司の手が頭の上に乗せられた。さっきみたいに梳くようにして手を滑らせるので、千秋はその手から逃れるように頭を振る。
いや、なに当たり前のように再開してるんだ。終わったんじゃなかったのか。
「柳瀬さん、もう終わりじゃ」
「ん?俺、まだ満足してないけど」
「え?……あっ」
そういえば「撫でる」の前に「満足するまで」が付いていた。完全に見落としていたことに今さら気づく。
なんだそれ、それって一体いつなんだ。これも計算済みだったのか、やつは……!ちょっとずるいような気もするが、しかし反論はできなかった。
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