2. 流されるな

23/26
前へ
/152ページ
次へ
 少しうとうとしてきたところで、英司の手が止まって、離れた。あ、もう、終わりか……。 「……あれ、何してるんですか、柳瀬さん」  何か動き出した英司に気づき、千秋は起きあがろうとした。が、途中で動けないことに気づく。眠い頭が覚める。 「やっぱりこの格好じゃやりづらいから、姿勢変えるぞ」 「え、え?」  いつの間に、脇の下から回り込んだ腕が、体にきゅっと巻き付いている。 「ちょっ、何してっ」 「こら、ちょっと大人しくしてろ」  ジタバタと抵抗を試みるが、埃が立つだけで、ちっとも腕から逃げられない。ベッドは壁につくように配置されているが、英司はその壁まで後退していこうとする。  それについて行くように、英司に抱きかかえられている千秋の体も、後ろからずりずりと引き寄せられる。  ほんと、何がしたいんだこの人っ…!顔が見えないせいで余計わけがわからない。  途中もがきつつも、最終的に英司の足の間に収まり、背中に寄りかかる姿勢に落ち着いてしまった。 「はぁ……」  なんか、今のでどっと疲れたぞ。暴れたから、余計。いきなり技をかけられた気分だ。  文句言ってやる、と思い立つと、また英司の手が頭の上に乗せられた。さっきみたいに梳くようにして手を滑らせるので、千秋はその手から逃れるように頭を振る。  いや、なに当たり前のように再開してるんだ。終わったんじゃなかったのか。 「柳瀬さん、もう終わりじゃ」 「ん?俺、まだ満足してないけど」 「え?……あっ」    そういえば「撫でる」の前に「満足するまで」が付いていた。完全に見落としていたことに今さら気づく。  なんだそれ、それって一体いつなんだ。これも計算済みだったのか、やつは……!ちょっとずるいような気もするが、しかし反論はできなかった。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1327人が本棚に入れています
本棚に追加