2. 流されるな

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 ……そう思っていたが、時間が経つにつれて、徐々にムズムズしてくる。  英司にくたりともたれ掛かり、完全に力は抜けている。お腹、撫でられてるだけなのに……なんだか変な感じがする。 「……は……」    バレないように小さく吐息を漏らすと、聞こえてしまっていたらしい、英司に「お腹も気持ちいいんだ?」とからかうように囁かれる。 「違いますっ……ちょっとくすぐったいだけで」 「ふぅん」  それもこれも、英司が妙な触り方をするせいだ。  どこに手が触れるかわからないから、感覚が過敏になって、だからといって手に意識をやると余計に反応してしまう。  たまらなくなって、ふうふうと小さく息を漏らしていると、今度は英司の手が上昇しようとしてくる。  そして、 「んやっ……!」  そこに触れられた途端、千秋は脳をたたき起こされたような感覚に陥る。  今までに経験のない、ビリッとした刺激に、思わず体を仰け反らせた。 「千秋、かわいい……」 「はぁっ、なに、な……」  この男、乳首つまみやがった。今まで触られたことも、自分で触ったこともないのに。信じられない。  男の乳首くらい、って思われるかもしれないが、相手がこの人で……しかも、偶然ならまだしも、この人明らかに……!  後ろからぎゅうっと抱きしめてくる腕を今度こそ振り解くと、ベッドから降りて距離をとった。  そして、息を荒らげながら、千秋はビシィ!と部屋の出入口を指す。 「もう満足しましたよね。じゃあおかえりください!」 「まあ、今日のところは満足したけど……怒ってんの?」  英司は悪びれる様子もなく、つまらなそうな顔をして千秋に聞く。 「あ、当たり前でしょ……もうそんな気力無いだけで、あんな、あんなとこ」 「お前って感じやすいよな。どこもかしこも撫でるだけで気持ちよがって」 「はあ!?」  ベッドを降りながら、淡々ととんでもないことを言う。  そして、相変わらず距離をとっている千秋にチラリと目をやると、 「でも、そこがかわいい」  と、わざと千秋を困らせようとしているのか、そう言ってみせた。 「ぐぅ……」 「じゃあ、俺帰るわ」 「……はい」  スマホ以外に荷物はないのか、それをポケットにしまうと、あっさりと告げる。  ……今日の俺は、振り回されすぎだ。
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