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……そう思っていたが、時間が経つにつれて、徐々にムズムズしてくる。
英司にくたりともたれ掛かり、完全に力は抜けている。お腹、撫でられてるだけなのに……なんだか変な感じがする。
「……は……」
バレないように小さく吐息を漏らすと、聞こえてしまっていたらしい、英司に「お腹も気持ちいいんだ?」とからかうように囁かれる。
「違いますっ……ちょっとくすぐったいだけで」
「ふぅん」
それもこれも、英司が妙な触り方をするせいだ。
どこに手が触れるかわからないから、感覚が過敏になって、だからといって手に意識をやると余計に反応してしまう。
たまらなくなって、ふうふうと小さく息を漏らしていると、今度は英司の手が上昇しようとしてくる。
そして、
「んやっ……!」
そこに触れられた途端、千秋は脳をたたき起こされたような感覚に陥る。
今までに経験のない、ビリッとした刺激に、思わず体を仰け反らせた。
「千秋、かわいい……」
「はぁっ、なに、な……」
この男、乳首つまみやがった。今まで触られたことも、自分で触ったこともないのに。信じられない。
男の乳首くらい、って思われるかもしれないが、相手がこの人で……しかも、偶然ならまだしも、この人明らかに……!
後ろからぎゅうっと抱きしめてくる腕を今度こそ振り解くと、ベッドから降りて距離をとった。
そして、息を荒らげながら、千秋はビシィ!と部屋の出入口を指す。
「もう満足しましたよね。じゃあおかえりください!」
「まあ、今日のところは満足したけど……怒ってんの?」
英司は悪びれる様子もなく、つまらなそうな顔をして千秋に聞く。
「あ、当たり前でしょ……もうそんな気力無いだけで、あんな、あんなとこ」
「お前って感じやすいよな。どこもかしこも撫でるだけで気持ちよがって」
「はあ!?」
ベッドを降りながら、淡々ととんでもないことを言う。
そして、相変わらず距離をとっている千秋にチラリと目をやると、
「でも、そこがかわいい」
と、わざと千秋を困らせようとしているのか、そう言ってみせた。
「ぐぅ……」
「じゃあ、俺帰るわ」
「……はい」
スマホ以外に荷物はないのか、それをポケットにしまうと、あっさりと告げる。
……今日の俺は、振り回されすぎだ。
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