3. つながりを求めた

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 土曜日、千秋は最寄り駅の広場で、拓也と待ち合わせしていた。 「他のやつらはもう向かってるらしいから、俺らも行こうぜ」 「拓也、すごい気合入ってるな」  上から下まで完璧に決めてきた拓也は、「ふ、当然だ」と涼しい顔をする。  というのも、今回、女子のメンバーがうちの大学の看護学科だったのだ。同じ大学とはいえ、なかなかコンタクトをとることができないので、ここまで集めたのは驚いた。  拓也は「この俺がお前を参加させることに成功したおかげだぜ」と意味のわからないことを言っていた。 「ここから野崎駅まで行けば看護女子に会える」 「ちょっと落ち着いたほうがいいんじゃないか……」  電車に乗ると、拓也は鼻息荒くさせながら早口で言う。  実は今日の合コンはその近くで行うらしく、わかりやすいということで、その野崎キャンパスに集合することになった。  野崎キャンパスは、千秋のアパートを中心に本キャンパスからは反対側にあって、看護学科も含む医学部の学生は、日々そちらに通っている。  アナウンスがそろそろ野崎駅に到着することを告げている。  本キャンパスからも野崎キャンパスからも割と近い千秋のアパートは、少なくともここの学生にとってはやはり優良物件すぎると、改めて実感した。 「一番乗りみたいだな」  野崎キャンパスの門の付近にたどり着くと、まだ誰も集まっていないようだった。  門からキャンパスの敷地を眺める。普通に広いな。もう18時だからか、ここから見る限り学生はほとんどいないようだった。  しばらくそうしていると、拓也が「あっ」と声を上げた。 「あいつら、やっと来たか」  言うほど時間の差はないはずだが、自分たちも歩いてきた方向から三人、男がやってくるのが見える。学部は違うが、拓也の友人で、全員見たことある顔だ。  その三人と合流すると、拓也とその友人たちが今日の合コンを前に、盛り上がり始めている。  するといきなり、友人の一人が「高梨くん、今日は参加してくれて本当ありがとな!」と手をパチンと合わせてきた。 「いや、礼を言われることじゃないだろ」  確かに参加したくてしたわけではないが、千秋のような一般男子大学生がこういうものに出向くのは、別に珍しいことではないはずだ。  しかし、さらに別の友人が「いやいやいや」と被せてくる。 「今日の合コンは、高梨くんなくして成り立たないから。高梨くんありきだから!」  ……ますます意味がわからない。 「もう俺、イケメンだと女の子とられる〜とか、そういう境地からは脱してしまったわけよ」 「俺も俺も」  悟りでも開いたような顔で、友人トリオがお互い頷き合う。  こいつら大丈夫なのか……?心配になって拓也を見ると、「な?」と意味不明なドヤ顔を向けられたので、それ以上深堀りするのはやめておいた。
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