3. つながりを求めた

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 しばらくすれば、集合時間少し前に女子五人も全員集まった。  休みの日だから当然といえば当然だが、彼女たちも駅の方からやってきたらしく、校舎からではなかった。 「よし、みんな集まったし、そろそろ行くか!」  テンションの高い拓也が先陣を切ると、みんなもそれについていく。拓也たちが言うには、彼女たちは派手ではないが、男子に人気のあるタイプらしい。  千秋も歩き始めたとき、門から学生らしき二人組が出てきて、ぶつかる前に立ち止まる。 「……えっ」  千秋は思わず声を漏らした。   出てきた人物は、門の死角で最初こちらに気づかなかったが、千秋は先にバッチリと見てしまった。  不運にも、自分の声に振り向いたその人物と目が合ってしまう。 「あ?…………高梨?」 「あ、この前の子」  門から現れたのは、英司と、路地事件の日に英司と一緒にいた女の人、恵理子だった。二人の視線が刺さる。 「柳瀬さん……」  一体何回目だ、この感じ。というか、なんでここにいるんだ。え…ここの学生だったのか?しかも、なんでまたその女の人が一緒に…。  向こう側にいる拓也が、なかなか来ない千秋の名前を呼んでいる。  英司は合コンメンバーの方に一度目を向けると、再びこちらを見下ろす形で、ゆっくり視線を戻した。  そして状況が読めたように、 「…………合コン」  と、静かにつぶやいた。  その視線に、悪いことがバレた時のように千秋は内心ドキリとする。  もう一度、拓也に「おーい千秋?」と呼ばれたところで、今度こそハッと我に返る。拓也は千秋を気にしつつも、女子たちとのおしゃべりに夢中らしい、英司には気づかない。 「俺もう行くんで」  目も合わせず小さい声で言うと、千秋は逃げるように英司の横をすり抜けて、合コンメンバーの元に早歩きで戻って行く。  拓也が遅いぞ〜と文句を言っていたが、適当な返事しか返せない。  ……俺、この一年間と少し柳瀬さんと同じ大学だったの、こんなに近くにいたのに知らなかったのか。
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