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その後の合コンは散々で、ひたすら英司のことで頭がいっぱいだった。
英司は医学部で、キャンパスが違うから気づかなくて、毎日忙しそうで……。そうなら、全ての辻褄が合う。しかも、うちの医学部となればかなりの難関である。柳瀬さんって、やっぱり頭いいんだ。
上の空でぐるぐる考えていると、「拓也がついに潰れた!」と友人の一人が騒ぎ始めた。まだ一時間しか経ってないのに、最初から飛ばすからだ。
「え、高梨くん帰っちゃうの?」
「まだ少ししか時間経ってないのに〜」
女子たちが不満そうに言い始める。たしかに二人も抜けたら盛り下がるかもしれないけど、拓也が潰れてるのではしょうがない。
「ごめん。悪いけど拓也を送ってかないと。今日はありがとう」
それから彼女たちはしばらく食い下がったが、拓也を立ち上がらせて、なんとか合コンを抜けた。最後にまた拓也の友人に礼を言われてしまった。
タクシーに乗って拓也を部屋まで送り届けた後、千秋は歩いて帰ることにした。ここから30分くらいかかるけど、急いでないし、言うほどの距離じゃないだろう。
歩きながら、考え事の続きをする。
英司が土日だろうといつも夜遅くに帰宅してくるのは、医学部だったからか?
勉強が大変そうというのはイメージとしてあるけど、生活スタイルがまちまちで不揃いなのも、そういうことなのか。
色々と疑問は湧いてくるけど、なにせ医学部について千秋は全然知らない。
考えても無駄なのは分かっているが、こんな近くにいたのにも関わらず、同じ大学だと今まで知らなかったことに、思ったより驚いているようだ。
よし、考えるのやめよう。
同じ大学だからといって、キャンパスも違うし普通にしていれば会うことはない。今までもそうだったように。
確かにびっくりはしたが、千秋には関係のないことだ。何より、ずっと英司のことを考えている自分が気持ち悪すぎる。
途中で何か買っていこうという別の思考へシフトさせると、千秋は足早に家を目指した。
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