3. つながりを求めた

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 自分のアパートに戻ると、エレベーターが2階で止まっていた。千秋と同じ階だ。もしかして柳瀬さん、と考えが過ったが他にも住人はいる。  結局、相変わらず人気のない英司の家は素通りし、千秋は部屋でアイスを食べていた。  そろそろ暑くなってきたから、食べたくなって帰りに買ってきたのだ。  ……そういえば、柳瀬さんにもらった大量のお菓子もあったな。まだ食べきれていないが、毎日ちょこちょこ食べている。  先日、英司がそれらを持ってきて、一緒に食事をした日を思い出す。  ……なんで、あそこまでできるんだろう。  千秋はずっと、英司のことを許し難い二股最低男だと思っていた。しかし、しっかりしろ自分を律することもしばしばだが、最後の最後には英司のあの眼差しに流されてしまっている。  許容範囲が着々と広められている。そこは、認める。改めて思うと嫌になるほどだ。  自分にここまで構うのは、昔逃してしまった恋人をただ都合よく取り戻したいからだとか、他にも色々と考えは出てくるが、何が正解かわからない。  あの態度を見ていると、本気なのかと思ってしまいそうになる。しかし、後からハッとするのだ。昔のアレを見ているからこそ、そうとは簡単に思えない、思えるわけがない。でも、最近はそうやって我に返ることもだんだん怪しくなっている。  もしかして、二股をしていた時は、二人に対して同じくらい本気で全く悪気はなかったという可能性もある。  いや……それはそれで理解が及ばなすぎて受け入れられないな。千秋は自嘲気味に笑いをこぼした。  アイスを食べ終わり、棒を捨てに行こうと立つ。  その時、壁の向こう側から、何かが落ちる凄まじい音が聞こえてきた。  バサバサバサッ、ガタッ、……バタンッ  驚いて慌てて壁に耳を当てたが、その後はシーンとしているだけで、何の音も聞こえてこない。  ……待て、最後の音、もしかして人間が倒れる音か?    考えれば考えるほどそんな気がしてくる。千秋は最初に英司が家に来た時のことを思い出した。あの時、彼は空腹で倒れた。  背筋がスーッと凍る。今度は空腹どころじゃないかもしれない。なにせあの人は不安定な生活をしている。体調を崩して、もしかしたら重症の可能性だってある。  千秋はすぐに家から飛び出て、英司の家へ走った。  
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