3. つながりを求めた

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 インターホンを鳴らしたが、反応がなくて焦る。  ええい、近所迷惑だけど緊急事態なので仕方ない。ここから呼んでみる。 「柳瀬さん、柳瀬さん!柳瀬さんー!」  ……どうしよう。本当に中で倒れてるのか?そもそも英司が倒れた音ではない可能性もあるけど、ここは最悪を考えて動くほかない。  ダメ元でドアノブに手をかけると、抵抗なく回る。  空いてる……。不用心すぎないか。もしかして泥棒…と一瞬頭によぎったけど、千秋は急いで中に入った。柳瀬さんも前むりやり部屋に入ってきたし、これでおあいこだからな!  ドタバタと中を進むと、一番奥の部屋のド真ん中、仰向けになって大の字で倒れている英司がいた。 「や、柳瀬さんっ、大丈夫ですか!」  こういう時むやみに揺らしたりしたらダメなんだっけ。なけなしの知識を振り絞って、耳元で柳瀬さんの名前を呼んだ。  口元に近づくと、息は普通にしていた。ひとまず安心した。外傷もないし、周りには本が散らばっているけど、どういう成り行きで倒れたのかわからない。また空腹か、疲労か、頭でも打ったか。  呼んでみても全然起きないし、救急車を呼ぼうとしたが、そのとき英司が目を覚ました。 「ん……」 「柳瀬さん!」  起きたら千秋が上から覗き込んでいて、彼は驚いたようだ。 「え……なんで高梨がいるんだ」 「すごい音が聞こえてきたから、柳瀬さんが倒れたかと思って、急いで見にきて……」  見た目平気そうな英司にホッとしつつも、それを隠すように捲し立てた。 「そうか。悪い、心配かけて」 「いえ……大丈夫なんですか?」 「ああ、本取ろうと思ったら一気に落ちてきて、避けるためにしゃがみ込んだんだけど、気づいたら寝てた」  つまり、疲労で寝落ちしたってことか。じゃあよかった……とはならないが、疲労も溜まればとんでもないことになりかねない。  ……医学部の英司なら、千秋よりもわかっているとは思うけど。  英司は徐に立ち上がると、パンパンと埃を払うように服を叩いた。
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