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「あ……じゃあ、大丈夫そうなら帰ります」
「まあ待てよ。聞きたいこともあるし」
……嫌な予感がした。
「今日、合コン楽しかった？」
次に会ったらそのことについて触れられるとは思ってたけど、思ったよりも冷たい言いように、千秋はすぐに答えられない。
……なんだこの人、もしかして怒っているのか？
「行きたくて行ったわけじゃないんで」
「じゃあなんで行くんだよ」
「それは、俺にだって色々…」
静かに咎めるように言われ、さらにその妙な迫力に、ぐっと引き下がりそうになる。
しかし色々事情がある、と言おうとしたところで口は噤んだ。「柳瀬さんから逃げたくて拓也の家に置いてもらうのと引き換えに合コン行く約束をしました」なんて言えるか。
「色々ってなに？」
「今日は、拓也に付き合って行っただけです」
「……また拓也かよ」
直接的なことは言われていないが、あまりに文句言いたげな態度だ。いい加減、千秋もカチンとなる。
たとえ合コン行こうが拓也と仲良くしようが、英司にそんな態度をとられる筋合いはないはずだ。
「あの、なに考えてるのか知りませんけど、俺がどうしようと俺の勝手ですよね」
負けじと睨み返すと、英司は無表情のまま千秋を見下ろした。
「……お前、俺の気持ち知っててそんなことしてんの」
「はい？」
地を這うような低い声。
「俺がお前のこと好きなの知ってて、こんなキープみたいなことしてんのかって聞いたんだよ」
…………なんて言った、この人。
「……ひでえよ、お前」
英司は目を逸らして、呟くようにそう漏らす。
……キープ？この俺が？
いや、俺は最初に言ったはずだ、絶対付き合わないって。それでも今まで関わってきたのは柳瀬さんの方だろう。勝手にキスしてきたり、食べ物で釣ってきたり、引っ越しを強引に引き止めたり。
それに甘んじていた自分もいたけど、「キープ」彼はそんな風に思っていたというのか。
しかし、それよりもさらに強い怒りが湧いてくる。
たとえ千秋がキープをしていたとして、英司がそれを咎められる道理はないという確固たる理由があったからだ。
……あ、だめだこれ、我慢できない。
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