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目が覚めると、自分の部屋のベッドで寝ていた。
あれ、夢でも見てたか。確かバイト行って、コンビニ行って、そこからの記憶が曖昧だ。なんか変なことを考えていたのは覚えてるけど……。きっと、家に着くなりそのまま寝てしまったんだろう。
キッチンのある廊下の電気がついているのに気づく。
消しに行こうと起きあがろうとしたが、体が驚くほど重くて叶わなかった。
これ……熱あるな。そう悟ったところで動くのを諦める。
すると廊下の方から、物音が聞こえてきてピクリと固まる。泥棒かと思ったが、すぐに部屋の扉が開いて不覚にも安心させられた。
「なんで柳瀬さんがいるんですか……」
「起きたのか。なら水飲んで、食べられるようなら何か腹に入れるか」
「あの俺」
「お前軽く熱あるぞ。俺の家の前に倒れてた」
なんか食べられるもの買ってくる、と言って英司は出て行ってしまう。
家の前に倒れてたって俺、家までもうすぐなのに、そんなところで力尽きていたのか。ということは、英司がここまで運んでくれたことになる。……後で謝ろう。
渡された水をコクコクと飲み干すと、手を伸ばしてテーブルにコップを置いた。
少しふわふわする頭で考える。
あんなに避けていた英司と、こうしてまた呆気なく会うことになるなんて。じわじわ実感が湧いてきた。
これで何日ぶりだろうか。また会わないようにするの失敗したな…俺っていつもこうだ。しかも、盛大に迷惑かけてるし。…やっぱり後で謝ろう。
さっき出ていく前、起き上がれないのがわかっていたように、英司は千秋の上半身だけ起こした。随分慣れている感じだった。
取られるまで気づかなかったけど、おでこには、濡れタオルも乗せられていた。
英司は思ったよりもすぐ帰ってきた。
「軽い熱だけど、食べやすいやつな。おかゆとあったかい方のうどん、どっちがいい?もし食欲ないなら、ゼリーとか色々買ってきたから」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「あ?」
既視感がある。ぶら下げられているパンパンのスーパーの袋。目に入った必要そうなものは全部買ってきた、みたいな感じがありありと伝わってくる。
ただの軽い熱なのに、そこまで甲斐甲斐しく看病してもらうのは何だか申し訳ない。でも、正直助かっているのはたしかだ。
「いや……ありがとうございます。おかゆでお願いします」
「わかった。これ、横に置いとけ」
袋から出したスポーツドリンクを渡される。
もしかして……そっちの袋全部飲み物なのか?だとしたらすごい重かっただろうし、やっぱり絶対飲みきれる気がしない。
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