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目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。
時計の針は8時を指している。今日が休みの日でよかった。
ふと部屋を見回したが、英司はいないようだ。
……あれ。
ベッドから降りようとしたら、床に毛布が落ちているのが目に入る。もしかして、ここで寝てたのだろうか。
シャワーを浴びて、ベッドに腰を落ち着かせると、
「あ、起きたか?」
ガチャリと玄関から音がして、入ってきた英司が部屋に顔を見せた。
「あ、はい……おはようございます」
「おはよ。結構回復したっぽいな。熱は?」
「おかげさまで、測ったら平熱でした」
ベッドに座っている千秋のところまで寄ると、おでこに触れられる。
「今日なんもない日?」
「はい」
「なら、とりあえず今日までは安静にしとけ。朝飯買ってきたけど食べるか?」
「え、いいんですか」
もう熱も下がって元気なのに、そこまで面倒を見てくれるらしい。
「当たり前だろ。お前のために買ってきたんだから」
淡々と言う英司に、頬がじんわり熱くなる。
こういうことを平気で言うのだから、悔しくて、俺は顔をそらした。
テーブルに向かい合うように座ると、英司の買ってきた朝食を食べ始める。
千秋は何も話さない英司をちらりと伺う。何を考えているのかわからない表情だ。
一方で千秋は、非常に落ち着かない気持ちだった。それは、さっき昨日のことを思い出した時、叫び出したいほど恥ずかしくなってしまったからだ。
ああ、俺本当意味わからないこと言ってたよな。英司が何も言わないので、どう捉えたのか余計気になってしまう。
いや、触れるつもりがないなら一生触れられず、どうかこのまま墓場まで持っていかせてほしい。
「高梨」
「はいっ!」
まずい、無駄に元気な返事をしてしまった。
「昨日」
ぎくりとする千秋とは英司は真剣な顔つきで千秋を見据え、はっきりと口にした。
「回復したら聞くって言ってたやつ」
「え?……ああ」
一瞬何のことかわからなかったが、そういえばそんなことを言っていた。
しかし、心当たりが多すぎて、実際何を聞かれるかわからない。
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