3. つながりを求めた

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 英司は少し迷った素振りをしてから、話を切り出した。 「あの日、お前……二股がどうのこうのって言ってただろ」  英司の言葉に、朝食を食べる手が止まる。  そのことかもしれない、と思ってはいたのに、いざとなるとヒヤリと汗が背を伝った。  なんて言われるんだろうか。「バレてると思わなかった」か、「あの時はごめん」か。  どっちにしろ、英司がそれに触れるなら、もう終わり…… 「俺、二股なんてしてねえけど」  ……………………………………………は?  なんの偽りもなさそうな瞳できっぱり言うので、千秋はしばらく思考停止した。  いや、もしかして、ごまかそうとしてる? 「でも、じゃあ浮気……」 「してねえ」  即答かよ……。迷いがなさすぎて逆に怪しいくらいだ。  でも、たしかに、このままうやむやにしてしまった方がいいのかもしれない。元々、千秋は言うつもりもなかったのだから。  そんな考えに変わってきたところで、英司が次の言葉を投げかけてくる。 「で、高梨はなんでそんな勘違いすることになったわけ」 「勘違いって」 「まごうことなき勘違いだろ」  自らここまで突っ込んでくるなんて、どうバレたのか探っているか、本当に嘘をついていないかどちらかだ。  言うべきか、言わぬべきか。千秋は頭をフル回転させる。  間を埋めるように、朝食の最後の一口を口に入れた。  なかなか話出さない千秋を、英司が「高梨」と静かに、でも強めな口調で呼ぶ。  千秋は、ふう、と小さく息をついた。  英司の選択肢には「言わせる」しかないらしい。千秋もすでに口走ってしまっている以上、逃げることはできない。  千秋は、もうどうにでもなれの精神で、一部始終を話すことにしたのだった。
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