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翌日、早速不動産に駆け込んだが、新しい部屋は決まらぬまま1週間が経った。
とりあえず、英司とはあれから一度も会っていない。
物件も色々探してみたけど、時期もありやっぱりそう簡単には見つからない。大学とちょうどいい距離にあって、良い部屋なわりにこの家賃の今のアパートが空いていたのは本当にラッキー中のラッキーだったのだ。
どこか、大学からそこまで遠くなくて家賃もちょうどいい物件はないのか。
引っ越し資金もかかるし、考えれば考えるほど今の部屋を手放したくなくなるな……。
今日はバイトの後に買い物に行ってから帰宅したら、時間はすでに19時を回っていた。
千秋は余裕のある限り自炊をしているため、エプロンを身につけると少し遅めだが夕食を作り始めた。実家暮らしの時は両親が共働きで一つ下の弟によくご飯を作っていたから、慣れたものである。
まあ、今日は軽く野菜炒めとスープでいいか。昨日買った豚肉も食べなきゃいけないし。
適当につくり終えたところで、早炊きに設定した炊飯器が鳴る。いつも一人分しか炊かないし余ったら冷凍庫行きだし、一人用炊飯器に変えてもいいかもしれない。
ご飯をよそおうとしゃもじを手に取ったところで、ピンポーンとチャイムが鳴る。こんな時間に誰だ?宅配は頼んでいない。
「はいはーい、今出ます」
しゃもじを持ってきてしまったことに気づいたが、すでにドアを開きかけていため戻るのはやめておいた。
とドアを少し開けたところで、なぜか急に向こうから引かれるように開かれる。
「う、わっ!」
ドアごと引っ張られた千秋は危うく転びかけた。
もしかして不審者、と流石に焦って顔を上げる。が、来客の正体を目の当たりにした千秋はもう何度目だろうか、パキッと固まってしまった。
ドアを向こう側から引いた訪問客、いや不審者は、なぜか息切れを起こしている隣人だったからだ。
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