3. つながりを求めた

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 英司は「それで」と続けていく。 「そいつに『その子のこと本気で好きなんだ』って言われて」 「ん?ちょ、ちょっと待ってください」 「なんだよ」 「付き合ってるの言ったんですか、その、俺と……」 「聞かれたから言ったけど……そいつ以外には言ってねえから安心しろ」  そういう問題じゃない!と叫びそうになった。  あの時、自分たちの交際を知っている人は誰一人いなかったのだ。言いにくかったし、千秋としては交際宣言なんてもってのほか、二人の中で無理に言う必要はないということになっていた。  五年も前の話なのに複雑な気持ちが湧いてくるが、もうこの際どうでもいい、どうせ名前も知らない相手だ。  とりあえず今はスルーを決めることにする。 「それで、そう聞かれた後すぐいきなり倒れ込んできて受け止めたら、キスされたんだよ」  英司はそこまで言い切ると、これで話は終わりだと言わんばかりに口を閉じた。  いや、待て待て。千秋は脳内でストップをかける。重要なところが話されていない。 「……じゃあ、いきなり倒れ込んできてキスされたとして、あんな体勢になりますか」 「あんな体勢って?そこまで覚えてねえ」  聞き返されて、千秋は言葉に詰まる。説明させるのか、それを。  でも重要なのはそこなのだ、千秋が聞きたいところ。ぐ……こんなの不本意すぎる。 「だから、ああやって、付き合ってる人にしかしないような感じで抱きしめてたじゃないですか!キスだって……」  後半はもうやけくそだ。勢いを落として黙り込むと、千秋は俯いた。  なんだこれ、嫉妬してるみたいになったじゃないか。ただ、説明したかっただけなのに。恥ずかしいやら、情けないやらで、顔を上げられない。  英司の動く気配がして、向かいの千秋の方へ近づいてくるのがわかった。  横に腰を下ろすと、こちらの顔を覗き込んで「泣いてなかった」と呟いた。 「泣くわけないじゃないですか」 「昨日みたいに泣かれたら、俺だって焦る」  嘘だ。英司がそんなことで焦るわけがない。少なくともそんな様子、俺はほぼ見たことがない。
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