3. つながりを求めた

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 千秋が黙っていると、英司がポンと肩に触れる。 「高梨……信じられない?」  こちらの心を読んだように言うので千秋は少し驚いたが、すぐさま首を横に振った。  英司にこれ以上説明させることもないだろう。千秋はこの話題を終着させることにした。 「嘘だな」 「はっ?」  思わず素っ頓狂な声が出てしまった。話は終わりへと近づいているはずなのに、なかなか辿り着かない。 「俺、五年もお前にそう思わせてたんだよな、ずっと……。お前があまりそういうこと言わないの知ってたし、それに気づくべきなのは俺だったのに」 「それは……柳瀬さんのせいじゃないんで」 「でも俺の前から消えたのも、本当はそれが原因なんだろ。ずっと嫌な気持ち抱えさせて、俺は知らずにまた勝手に現れて迫って、わけわからなかったよな」  言ってない自分の気持ちもどんどん当てられて、千秋は何も言えなくなる。  英司は、変なところで鋭くて、いつも気持ちを読まれているようだ。 「でも、お前が俺のこと嫌いでも、やっぱり俺はお前を離せない……」  いっそう苦しさを含んだその声が耳に入ってきて、千秋は思わず英司の顔を見た。泣いているのかと思った。  英司がこちらを正面に向きを変える。 「なあ、信じてくれ。お前が好きだ。ずっと、お前のことしか好きじゃない。正直卒業式のことなんて忘れてたくらい、どうでもよかったんだよ。誰にキスされようが、お前以外どうでもいい。あの時はちょうど、これからどうやって千秋と会うかずっと考えてて……。くそ、なんであのとき油断したんだ」  千秋が信じられてないと気づいてから、ヒートアップするように英司が感情だだ漏れで話すので、思わず戸惑う。  すごい、後悔してるし、辛そうだ。顔を苦悶に歪め、必死に千秋に縋っている。  こんな英司は初めて見た。  きっと、普通だったら話せばわかってもらえる。なのに俺がこうだから、柳瀬さんは。
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