3. つながりを求めた

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「で、本当に信じてくれたんだよな……?俺のこと」  目を細めてじーっと疑うように覗き込んでくる英司。 「……しつこいですよ」  きっと睨んで言うと、英司は「はあ〜……」と安心したように息をついた。 「これで心なくお前を好きだって言えるんだな」 「今までだって心置きなかったですけどね」  千秋は思わず軽く笑いをこぼすと、英司からの反応がない。てっきり「そこはつっこむな」とでも言われるかと思ったのに。  不思議に思って横を見ると、こちらを見つめる英司とパチリと目が合った。  いつの日かのように、その視線に捕らえられて動けなくなる気がして、そう気づいた時にはもう遅い。  どこか熱を含んでいて、その目に見られているだけで、体が上気してくるのだから不思議だ。  そうすると英司の顔を見つめるしかなくなって、やっぱりこの顔好きだな……と思っているうちに、だんだんとその顔が近づいてくる。  そして、やがて、ゆっくりと唇が重なった。  ただくっつけるだけのキスなのに、とてつもなく満たされる。  数秒そのままでいると、次第に離れていく。離れる瞬間に、無意識だが、追いかけるように自身の唇が少し突き出てしまって恥ずかしくなった。名残惜しそうにしてるって思われたかもしれない。 「……お前のちゃんとした笑顔、久しぶりに見たかも」 「……そうでしたっけ」 「やっぱりかわいい」 「なっ……」  かわいいって別に嬉しくないはずなのに、なんか妙にムズムズしてしまう。  ……柳瀬さんが褒め言葉で言ってるって、わかってるからかな。 「千秋、本当に卒業式から今日まで、ずっと本当にごめん。信じてくれてありがとうな」 「もう終わりって言ったじゃないですか。……でも柳瀬さんさんこそ、勘違いしてた俺に、全部話してくれてありがとうございました」  目を合わせて言うと、英司は心底安心したように、眉を下げて笑った。
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