3. つながりを求めた

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 もう気にしてない、とわかるように英司の方に体ごと向き直ると、もう一度ちゅっと軽いキスをされ、英司が満足げに微笑んだ。  千秋は、横のベッドにコテンと頭を預ける。  なんだ?いつもはもっとガツガツくるくせに……今日というか、最近はやたら遠慮気味な気がする。  別になんかしろっていうわけではなく、単純に毎回ペースを乱されるのはごめんだ。  千秋は不満げにちらりと目をやると、すぐに目をそらした。 「.……柳瀬さん、昨日から全然触ってこないですよね」 「ああ…まあ、あんなことがあったし、あと千秋が嫌がるなら控えようと思ってな」 「今キスしたじゃないですか」 「いやそれは悪い、思わずというか。……どうした?」  ムキになって言い返すと、いつもこんなことを言わないからか、どころか抵抗しまくりだったのにと、英司は怪訝な顔でこちらを見てくる。  いやなんでここで引くんだよ…!謝るな!いや、そうさせたのは俺の方かもしれないけど……!心の中で理不尽に怒るが、どうせ口には出せない。  いきなり気を使ってくる英司と結局なにも言えない自分、どちらももどかしい。 「……別に、いいならいいですけど」  じゃあ今日はもうここまでだ、と立ち上がろうとすると、手を引かれて制される。 「悪い、珍しい感じだったから意地悪した。……触っていい?」  はああ?千秋は本気でキレそうになったけど、なぜか英司が喜んでいるので仕方なくやめておいた。 「結局そういうこと聞くんじゃないですか……」 「ええ?昨日はめちゃくちゃ素直だったのに」  そう言いつつも距離を詰めてきて、ぎゅっと抱きしめられる。 「や、柳瀬さん……」  千秋の答えも聞かずに、結局いきなりだ。  英司の力強く抱きしめる腕が、安心する匂いが、千秋を包んでクラクラさせる。昔も、こうやって抱きしめられるのが千秋は好きだった。  そうしているうちにふわふわと心地よくなって、千秋も腕を背中に回す。  そしてトドメに、彼はこう囁くのだ。 「千秋、好きだ。お前だけがずっと好きだ」
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