3. つながりを求めた

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 数時間前にも入ったが、風呂から出て部屋に戻ると、英司が不機嫌そうな顔をして待っていた。  ベッドに置かれたローションなどを見て妙な生々しさを覚えた。英司が部屋から持ってきたらしい。 「あの、出ました」 「……まじで手伝わせてくれなかったな」  恨めしそうに見てくるが、忘れてないか、俺の尻なんだけど……  男同士でするには、色々準備が必要である。  千秋は本物の経験がないだけで、過去に指なら入れたことがあった。それを言うと英司は心底驚いていたが、だから準備を一人でしようとすると、ものすごく嫌がられた。  自分がやってあげたいだの、初めてはどうのこうのだの。いやだから、入れるのは初めてじゃないっつの。そうツッコミを入れたわけだが。どうやるかも昔調べたことがあるし、大丈夫だ。  その後、思ったよりしつこく食い下がる英司をなんとか振り切って、千秋は風呂で一人準備したというわけだ。  不満げな英司を無視して、ベッドに座っている英司の隣に座る。 「あの、今度は柳瀬さんがやっていいんで……」  自然と熱を含んだ口調で言ってやると、途端に雰囲気を変えた英司が、千秋の腰を引き寄せた。  そのギラギラとした目を見ると、ゾクゾクする。 「んっ……」  すぐにまた口付けをなされると、今度は余裕なさげに舌が入り込んできて、口内を荒らし始めた。 「はぁ…っ、ん……」 「……はぁ……次は、絶対俺がやるからな……」  キスの合間にそんなことを言ってきて、執念すごすぎだろ……とぼんやりする頭で思った。  激しく絡む舌がときどき水音を鳴らして、その音にかあっとのぼせ上がりそうになる。 「っは……」 「千秋、横にするぞ」  唇が離れると、口早にそう言われ、ぽすんとベッドに倒された。さっきと同じ上から見下ろされる姿勢になり、心臓がバクバクと鳴り始める。  あ……俺、今から本当にするんだ、柳瀬さんと。  そう思うと、改めて緊張も恥ずかしさも嬉しさも一気に現実味が湧いてきて、どういう顔をすればいいのかわからなくなってしまう。 「あーもう……なんつーかわいい顔してんの」 「は、はあ……?いいから、早くしてくださいよ……」 「はいはい」  相変わらずの憎まれ口を軽く流しながら、英司は千秋の服を脱がしていく。  ズボンをするんと脱がされると、今度はTシャツに手をかける。 「まって!」 「なんだよ」 「ぜ、全部脱がすんですか……?」  明るい空間でそれは厳しいというか、というかそもそも上は脱ぐ必要はなくないか、見ても楽しいものなんてないし。 「俺は全部見たいの」  そう言われて思わず息を飲むと、その隙にTシャツもスポンと脱がされてしまった。  くそ、俺、好きにされっぱなしだ……。  下着まで全て取り除かれてしまうと、俺はさらされる体を隠すように腕を前に掛けた。  いたたまれない、こんな明るいところで。恥ずかしい、もうやだ、そう思うのに嬉しそうに微笑む英司を見ると、どうしても先に進みたくなる。 「ん……」  一度軽く唇にキスされると、ぎゅうと抱きしめられる。それだけで気持ちよくて、心地よくて、じわじわと満たされる。これ、やっぱり好きだ……。  英司が完璧に服を着たままなので、自分と同じように脱いでくれと言ったら、お前だけ何も纏わないのが興奮するんだと言われた。変態だ。  それでもシャツ一枚、体温が伝わってあたたかい。 「あ……」  ゆるりと抱き抱えられたまま、首筋、胸、腹と唇が落とされていく。  それだけで身体がいちいちピクピクしてしまって、英司から与えられる刺激全てに集中している。  しかし、全身くまなくキスする気なのかとじれったくなって、英司を呼んだ。 「どうした?」  ふくらはぎにキスしていたのを中断して、どこか痛いところでもあったのか、とでも心配する顔でまた距離が近くなる。  英司の優しい手が頬を撫でる。最初は英司の方が欲しがっていたというのに、自分もたいがいである。 「もうそれいいから、進みたいっ……」 「……こら、追い討ちをかけるな。初めてなんだから、ゆっくりな」 「じゃあ、ゆっくり、先に進む」 「……ったくお前……」  苦しげに顔を歪めると、英司は再び胸にキスを落として、少しつんとした尖りに優しく吸い付いた。 「んやっ……そ、それ」 「気持ちいいんだろ?」 「きもちいいって、いうかっ」  以前、「ご飯の礼に言うことを一つ聞く」という詰めの甘すぎる提案をした時、最後に乳首を軽く摘まれ、初めての感覚にすごい反応をしてしまったことを思い出した。  くすぐったいというか、ビリビリするというか、とにかく他の箇所とは明らかに違う。  英司に尖りの先をちろちろと舐めながら、片側は指できゅっきゅと摘まれる。 「ひっ、う……」  なんかっ、変だこれ、ずっとやってたらおかしくなる……!  さすがにやばいと思い始めたところで、唇と手が離れ解放された。 「っはぁ、はぁ」 「はぁ……ここだけでそんなんになっちゃうんだ、お前」  口を拭い、興奮しながら英司は千秋の顔にいくつかキスを落とす。  きっと俺は今、顔を上気させ、だらしない顔をしているに違いない。 「これは、未知の感覚だからであって……っ」 「未知の感覚ね。でもここはこんなんになってる」  英司が目をやった方を見ると、自身のそこが完璧に反りたっていた。  く……体は素直ってか……これだから男は……
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