4. それは単純で特別な

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4. それは単純で特別な

「なーんか千秋、ご機嫌だな?」  大学のいつも通りの食堂。  拓也にじーっと観察するように見られて、千秋は思わず身を引いた。 「は?どこが、いつも通りだろ」 「そうか?……ま、元気になったんならよかったよかった」  先日、千秋と英司が家で色々あったのがバレたのかと思った。そんなわけないのに。  だめだ……こんなところで思い出すな。  実はあのあと寝てしまい、起きたときも英司は部屋にいたが、一体どんな顔をすればいいのかとだいぶ変な態度になってしまったのだ。  ただ拓也の前では普通にしていたし、別に特別浮かれているつもりもない。元気になったのはたしかにそうだが…変なところで鋭いのはこいつもか。 「そういや、この前合コン行っただろ?」  その時にあのキャンパスで英司と鉢合わせ、今回このようなことになったのだから、忘れるわけがない。 「実はその中の一人と連絡先交換してさ、なんとかデートにこぎつけたのに、まさかの彼氏もち」 「あーあ……」  拓也は、なら合コンくんなよな〜とがっくり肩を落とした。  しかし今までも同じような目にあってきたからか、かわいそうな方向で慣れてしまったらしく、様子は落ち着いている。  拓也はいいやつで、外見も悪くなく大事にしてくれそうなのに、どうして相手に恵まれないのだろうか。  やっぱり、拭えない女好き感、又はがっつきすぎなせいか。 「どうやって知ったと思う?家に誘われて行ったら、そこに彼氏が来て修羅場よ」 「ええ……最悪だな」  流石に同情する。  そんなのにばっかり引っかかる拓也もどうかと思ったが、セフレが欲しいんじゃなくて恋人が欲しいんだ!と力強く言うので、そこは千秋も頷いた。  だけど、どこか既視感のある話だなと思いながら、千秋は続く拓也の愚痴に耳を傾けるのだった。
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