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「……卒業式のやつは圧倒的にそうにしか見えなかっただけで、普段はそんなすぐ誤解しないですよ」
そう言うと、ん、と英司は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐ「そうか」と笑った。たぶん、千秋がフォローするとは思わなかったのだろう。
ていうか、そもそも自分たちがどういう関係に今あるのかわからないのに、偉そうに口出すことなんてできない。
だからと言って、いきなり「俺たちってどういう関係なんですか?」なんてこと口が裂けても言えない。
……だからまあ、ずっと好きだと言ってくる相手に少し疑わしいところがあれば、ちょっとくらい気にするってだけだ。それくらいはその他大勢だって同じだと思う。きっとそうだ。
「医学部ってそんなに忙しいんですね」
「ん?まあ、部活とかバイトも一応できるけどな」
「え、そうなんですか。でも、柳瀬さんは…」
その様子からして、その両方やっていないんだろう。なのに食べるのを忘れるくらい、そして、ほぼ毎日夜遅くに帰宅するほど忙しい。
「俺は、早く一人前になりたいだけ」
と、英司が眩しそうに微笑んだので、それについて聞きたい気持ちもあったが、直後に顔に影が落ちてきて、瞬く間にキスをされた。
「……びっくりしてる」
「……しますよ、そりゃ」
小さな声で言うと、ぐんと抱き上げられ、ベッドに二人転がり込んだ。
「えっ、するんですか?」
「あの日から全然触れてない」
実は自分たちはこれからどういう方向に行くのか、なんとかして聞いてみようとは思っていたが、どうやらこれでは無理そうだ。
「いやっ、お風呂、入ってないんで」
「じゃあ、一緒に入ろう」
とんでもない提案をしてくる英司に千秋はしばらく抵抗したが、結局流されるままに、これで二度目になるそれになだれ込むのだった。
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