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ドタドタとキッチンに駆け込むと、鍋からスープが溢れかけていた。間一髪のところで火を止めると、スープは無事に落ち着きを取り戻す。
「せ、セーフ……」
ほっと胸を撫で下ろす。
「うまそうだな」
いつの間にかここまで入ってきたらしい。英司にいきなり後ろから覗き込まれてびっくりする。まじで、不法侵入で訴えてやろうか。
「あの、俺、今から飯なんで。帰ってくれませんか?」
冷ややかな目線を向けてやると、英司は不満そうにむっと眉間を寄せた。
あまり表情の変化は激しくない英司だが、全く表情に出ないわけじゃない。千秋は背を向けて、今度こそ米を茶碗によそう。
「お前なんでそんな態度なわけ。中学の頃と全然……」
あの頃は、もっと愛想よかったってか。
どちらにせよ、自分を騙した英司にそんなこと言われる筋合いはない。最低なことをした自覚すらないのか、してる上でこうなのか、こちらこそその態度を問いたい。千秋は軽くため息をついた。
「中学の頃とは違います。だから……」
そろそろ本格的に追い返そうとしたとき、ドタン!と後ろから大きな音がした。
「や、柳瀬さん!?」
うつ伏せに倒れているのは一人しかいない、英司で、流石に焦った千秋は駆け寄って英司の名前を呼ぶ。
嘘だろいきなり?そうだ救急車……!
慌てて携帯を取りに行こうと立ち上がると、英司が何か言ったのが聞こえる。よかった、生きてはいるようだ。
「な、柳瀬さん、大丈夫なんですか?」
再び英司のそばにしゃがみ込むと、何か言ってる彼に耳を傾ける。英司は苦しそうに千秋の方に手を伸ばしながら、うめくように言った。
「め、飯……」
「は?」
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