4. それは単純で特別な

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 でも、こんなときに、俺は思い知らされることになる。  ただ「無理をするな」そう言うのは簡単だ。  たぶん、柳瀬さんは何かしてもらうことを望んではいない。それでは本当にいつか体を壊すだろう。恵理子から聞いた限りほぼ確信できる。 「柳瀬さん、俺は、柳瀬さんがいつか本当に大変な病気になるかもしれないと思うと、こわいです」 「高梨、大丈夫。そこまで心配することじゃ……」 「今日は大丈夫でも!……続けてたら、いつか体に限界がきます。でも、俺は柳瀬さんが倒れても知ることもできない、こうなる前に何かすることもできない」  横に立って捲し立てると、珍しい千秋の様子に、英司は心配した顔をしてベッドから手を伸ばしてくる。  その手が立っている千秋の手を、宥めるようにぎゅっと握った。 「……悪い、結局また心配かけたな。お前は関係ないし、心配させないように黙ってようと思ってたんだけど」 「っ……それが嫌なんです!」 「……高梨?」  ぐっと目に力を入れて英司を見る。こんなふうに強めの口調なのは珍しいからか、英司が少し戸惑う。  自分は、柳瀬さんになにもできないのか。しようと思うことすらできないというのか。 「俺は、なんとなくで一緒にいるのも、関係ないのも、嫌なんです。今日も、もし知らずにいたのかもしれないと思うと、柳瀬さんがよくても、俺は……」  これは、わがままなのかもしれない。  もし、こんな英司を見ていられないのだとしたら、どういう関係だろうと、押し付けがましくても、勝手に何かすればいいのかもしれない。いつも何もできないのは、自分で自分にストップをかけてしまうからだ。  だけど、それじゃ足りない。  今日みたいなことだけではない。極論、英司が今度こそ本当の浮気をしても、千秋は何を思う権利すらないのだと、自分で結論づけてしまうだろう。そんなのは絶対にごめんだ。  だから、これは、この先の全てについての話だ。  ちゃんと柳瀬さんと一緒にいるためには、このまま中途半端でいちゃいけない。  柳瀬さんために何かできるようになりたい。  きっと、中途半端で生ぬるいと、俺はいつも手前で立ち止まってしまうから。    ここまで考えてしまうのも、わがままになってしまうのも、立ち止まって終わりたくないのも、その理由はもうとっくにわかっている。 「だから、柳瀬さん。俺を、正式な恋人にしてくれませんか」
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