4. それは単純で特別な

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「……で、柳瀬さんはどうお考えですか」 「どうお考えですかって」 「う、うるさい……」 「でもお前マジでかわいいな」 「バカにしてんですか!?」  いっそ涙目で前のめりになって言うと、英司が「ごめんごめん」と頭を撫でた。完全にペースに乗せられている。  でも今度こそ、真剣に答える気になったようだ。謎の余裕を持ってしまって意地悪モードな彼が腹立たしい。 「千秋、知ってると思うけど俺はずっとお前のことが好きだった」 「……」 「お前に色々してやりたいのも、やらしいことしたいのも、全部お前が好きだからだ。急かしたくないからゆっくり進めようと思ってたけど、お前が言ってくれたのがすげえ嬉しい」  そんな何度も言わなくたって、千秋は思ったが、話を中断したくなくてそれは飲み込んだ。ていうか、さらっとやらしいことしたいって言った……。  ふと、英司が千秋の両手を握って持ち上げた。 「俺はお前の特別になりたい。俺の方こそ、お前の正式な恋人にしてくれ」  そう言うと、力強く、鋭い眼差しが千秋を捉えて動けなくする。  そのセリフは俺の真似じゃないかと文句でも言えればいいのに、心臓は途中からずっとドキンドキンとうるさいくらいに鳴っていて、少し痛いくらいだ。  それと同時に、『特別』その言葉がストンと腑に落ちる感覚があった。  英司のために何かしたいだの、そのためには名目がだの、色々考えていたことは変わらない。  しかし、結局、千秋も欲しかったのはそれだったのだと、言われて初めて気づく。  単純に俺は、柳瀬さんの『特別』が欲しかったのだ。
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