4. それは単純で特別な

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「柳瀬さんを正式な恋人にしてあげます」  わざと上から目線に言ってやると、英司が横からぎゅうと抱き締めてきた。 「千秋」 「ん」  横を向くと、ちゅ、とキスをされた。  どうしよう、なんか現実味はないけど、なんか、どうしよう。俺、柳瀬さんと本当に…… 「ああ……まじで嬉しい」  千秋を抱きしめながら、柔らかい表情で言う英司になんだかたまらなくなる。 「や、柳瀬さん……っ」  前に回わされた片腕を気持ち程度にぎゅうと握っていたが、俺はおかしくなってしまったらしい、くいと肩をつかんで、英司の顔に自分の顔を近づけ──……  その瞬間、コンコンと扉をノックする音がして、反射でベッドから跳ね降りた。 「ひゃ、ひゃいっ」 「恵理子だけど」  ノックしたのは恵理子で、すぐには入って来ず外から声をかけてきてくれた。 「ちっ、いいところだったのに」 「柳瀬さんっ!」  舌打ちするな!  恵理子を入れようと、パタパタ慌てて扉の方に行く。  やばい、俺、今なにしようとした?こんな衝動的に、やっぱり今日おかしいかも……。落ち着け俺!  カラっとドアを開けると、腕組みした恵理子が立っていた。 「顔赤いけど」 「へっ」 「まあいいや、とりあえず泊まりは無理だし送るよ」  恵理子は千秋を迎えに来たらしかった。二人きりにしてくれたのも、気を使ってくれたんだろう。 「すみません何から何まで……」 「その様子だとなんとかできたっぽいね」 「なんとかできるかは、これから次第なんですけど」  その会話は聞こえていない英司がベッドから「恵理子」と呼ぶ。彼女は扉のところから動かずに目を向けた。 「ありがとうな、連れてきてくれて」 「……まあ、これで懲りてよね。とりあえずこの子は家に返すよ」 「ああ、頼む」  やっぱり二人は信頼しあった仲間という感じで、それが少しいいなと思えた。
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