4. それは単純で特別な

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 英司は角煮を食べると「まじでおいしい」と笑った。  それから満腹になるまで二人で食べて、食器も片付け終わると、いつもみたいに食後の時間が始まる。  ベッドを背もたれにして座っている英司が、少し遅れてキッチンから戻ってきた千秋を見て、けろりと話し始めた。 「そういえば、恵理子から俺の昔のこと色々聞いた?」 「えっ」 「いや、聞いたのはいいんだけど、なんとなくそうかなって確認」  それは昨日、恵理子の車の中で聞いた、英司の過去のことだろう。  実は、自分がわざわざ聞き出したわけではないが、本人以外から聞いてしまったことに少し引け目を感じていたのだ。恵理子も「どうなるかわからない」なんて言っていたし。 「あの…はい、聞きました。ごめんなさい、勝手に」 「いや、それはいいんだよ。隠してるわけじゃないし、恵理子が話したんだろ?」 「それは、そうですけど……」  向かい側に座る英司は、「わざわざ言うことでもなかったしな」と付け足した。  向かいに座った千秋がお茶を一口飲んだところで、英司が手招きした。いつものことなので、すぐに隣へ行くとぴたりとくっついてきた。千秋を肩に寄りかからせると、その手で腰を抱く。 「や、柳瀬さん、動けない」 「いいだろ、恋人同士なんだし」  不意に出たその単語に、ぽんと顔が赤くなる。  い、いきなり……!現実味は若干ではあるが湧いてきたけど、慣れるのはまだまだらしい。  別に誰かと付き合うのは初めてじゃないし、なんなら英司と付き合うのなんて2回目になるというのに、なんだろうこの感じ。妙に照れくさいというか、どうすればいいのかわからない。 「なに、また照れてる?」 「さすがにもうないです」 「嘘だ、ほっぺ赤くなってるし」  と言ってすりすりと頬を撫でられる。また英司はにやにやと嬉しそうで、なにがそんなに楽しいのか、やっぱりバカにしているとしか思えない。
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