大富豪酒井家

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大富豪酒井家

麻衣子は、トキ婆と暮らしている、トキ婆は80歳だが 自分では、まだ頭も身体も、しっかりしていると自慢する。 しかし、歳には勝てず、物忘れが酷くなって、ちょっと心配と言う事で 孫の麻衣子が、一緒に住む事になった。 大学を卒業して、就職した先が、トキの家の近くだった事も有ったし 麻衣子は、トキ婆が好きだった。 トキが話してくれる昔の話も好きで、休日前の夜は 「婆ちゃん、今日は、どんな話?」と、催促する。 美味しそうに、お茶をすすりながら 「そうだね~今日は、怖い話をしようかな~」トキがそう言うと 「怖い話?私、大好き」麻衣子は、期待でわくわくした顔で お茶うけの、煎餅をパリパリ食べる。 それは、トキが、とてつもない資産家のお屋敷に お手伝いさんとして、働いていた時の話だと言う。 その家の主は、大きな会社を経営していたが もう一つの仕事、投資で大儲けをして、大富豪になり 一体どの位の資産が有るのか、分からない程だった。 後を継いだ息子は、二人の息子を残して、50代で死に 長男の紘一が、後を継いだが、この息子は、お金には頓着せず 畑仕事や、山仕事が大好きで、自然の中で、のんびり暮らすのが好きだった。 東京をはじめ、あちこちに、家や別荘が有ったが、祖父の生まれ故郷の 小さな町に有る、昔、建てたお屋敷は、広大な山の裾に有り 辺りの景色も良く、畑仕事や山仕事が、思う存分出来ると 気に入って、そこで暮らしていた。 やがて、親戚に勧められ、迎えた妻は、家柄の良いお嬢様だったが 両親を亡くし、家は没落して人手に渡り、身寄りも無い塔子と言う人だった。 透き通るような肌に、大きな潤んだ瞳、塔子の美しさは、誰の目も奪う程だが 華奢な体は、強く抱いたら、折れそうだった。 初めて会った時から、浩一も心を奪われ、直ぐに結婚を決めた。 紘一は、あまり体が丈夫では無い、塔子の為に、お手伝いさんとして トキを雇い、家の事は、何もさせなかった。 二人は仲が良く、浩一が、畑仕事をしている所を 塔子は、窓から見るのが好きだった。 やがて二人に、可愛い女の子が産まれ、浩一は陽菜と名付け 陽菜を囲んで、幸せな毎日を送っていた。 そんなお屋敷には、東京の大学に行っている、弟の俊二も、時々帰って来る。 俊二は、小さい時から秀才と言われて、大学も難しいと言われる 有名な大学に行っていた。 俊二は、気さくで誰にでも優しく、帰って来る度に トキや、紘一の手伝いをしている、太助にまで、土産を買って来る。 そして「やっぱり、採れたての野菜で作る料理は、美味しいね~」と にこにこしながら「お代わり~」と言って、料理を作ったトキや 野菜を作った、紘一と太助を喜ばせた。
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