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氷屋のオッサン
夏になると金魚すくいや、かき氷の手伝いをした記憶がある。
金魚すくいのポイ紙(お客様が金魚をすくう紙)を貼る係は私だ。
今では主に樹脂製のリングに換わっているが、当時は針金で作られていた。
ポイの紙は普通の強度の紙を多く張り付けるが、破れにくい紙は私とお袋だけが分る印を入れて少しだけ作り置くのである。それを誰に提供するかはお袋のセールステクニックである。
かき氷の氷は氷屋さんが朝のうちに配達してくれるが、売り切れた時の追加注文は私がお願いに行く。電話なんて便利な手段は私の店には無かったからである。
「坊主、今忙しいからチョット遅れるって、お母さんに行っとけ!」
「オッサン、そんなんアカン! よう売れて全然有れへんねや、直ぐ配達して~な!」
オッサンと呼ぶのは、お袋が私に話すとき『氷屋のオッサン』と呼ぶからであって私の悪態の所為(せい)はない。
「忙しいって言うてるやろ! そんなに急ぐんやったら坊主、持って帰えるか?」
「それやったら縄付けて~や 僕、引っ張って帰るから」
交渉成立、一貫目の氷をワラ縄で縛って貰った私は、身長ほどの長さの引き縄を肩に回し、商店街の中を我が道のように店に向かった。
荷物が氷だけによく滑った。お陰で小2になったばかりの私でも、どうにか引っ張り歩くことが出来たのである。
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