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仏壇屋のおっちゃん
「フーちゃん、どないしたんや、なに引きずってんねんや?・・おっ氷やないか⁉」
「あっ仏壇屋のおっちゃんや・・お母ちゃんに頼まれてん」
「偉いな、うちの子なんか何の手伝いもしよらんのに・・フーちゃん、それ、その縄、緩んでる違うか? そのままでは店まで持たんで、氷も溶けとるのと違うんか?」
厄介なことになった。縄が外れそうになっているのを仏壇やのご主人が教えてくれた。
商店街では通路に商品を展示することもあり、誰かが表に立って居ることが多いのである。うるさい時もあるが、有難いこともある。
私は迷わず氷屋に踵を返した。
「オッサン、縄が緩んで氷が抜けそうや・・もう一遍、結び直してや!」
「えっ、坊主、お前ホンマに引きずって帰ったんか! 台車ぐらい持って来てるもんや、思とったのに!・・溶けてしもとるがな、しゃない奴ちゃな! オッサンがリヤカーで直ぐ行ったるさかい、そこで待っとけ!」
暫くしてオッサンは私を自転車の後ろに載せ、リヤカーの一貫目の氷と共に配達してもらったことを思い出した。
このように私の子供の頃を振り返ると、そこには今は亡きお袋と、そのお袋を取り巻く多くの大人たちがまるで友達のように登場する。
それもみんな親切で頼りがいのある、大先輩のおっちゃん、叔母ちゃんばかりだった。
現在社会はどうなんだろう・・子供を支援するような行政の名前ばかり多く訊かれるが、ご近所同士の『それは』どうなんだろう。
うちの周りでも専門店はおろか、商店街なんてシャッター通りとなってしまった。
子供ですか? そう言えば子供なんて殆ど見かけなくなった。
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