子どもの頃の友達

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 ひとりは、辛いから。  そう言ったおじさんは本当に悲しい顔をしていました。  それを見て、僕は怖くなりました。ひとりになることが、そんなに辛いものとは思ったことはありません。せいせいとすら感じます。だけどそれは間違いなのかもしれないと思わせるようなおじさんの表情でした。  実を言うと、すでに僕は少し寂しいと感じていました。みんなが楽しそうに話しているのを見て、いいなあと薄々感じていました。だけど、もうそこには行けない。自分で望んでこの位置に来たのだから、受け入れなければならない。そう思っていました。時々、自分と友だちになれそうな人をクラスの中で探すこともしてました。僕と同じように静かでひとりでいる時間が多いようなクラスメイトが何人かいて、仮に友だちになるなら彼らかなあとか、そんなことを考えていたりもしました。  きっと僕は誰かに背中を押して欲しかったのかもしれません。なにかきっかけが欲しかったのかもしれません。 「ありがとう」  僕はおじさんに感謝を述べました。  おじさんは恥ずかしそうにしながらも、柔らかい表情になりました。 「じゃあ、僕いってくるね」 「うん、いってらっしゃい」  僕は立ち上がり、歩き始めます。  これからは切り捨てていく選択じゃなく、掬い上げるような選択ができるように生きていけたらいいなと思いながら。
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