1. 前編

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1. 前編

 むかしむかし、悪女と呼ばれた女王がいた。  女王はたいそう派手(はで)好きで、自分のドレスや宝石を見せびらかす為に夜ごと(うたげ)を開いた。  毎晩のように城から聞こえてくる陽気な音楽に、民は顔をしかめた。  女王が贅沢(ぜいたく)をする分、民は困窮(こんきゅう)していた。 「俺たちが食うのにも困ってるってのに、なんて女王だ」 「女王は私たちのことなど、微塵(みじん)も考えてやしない」  次第に民は、悪いことすべてを女王のせいにするようになった。 「仕事でしくじっちまった。それもこれも、女王に苛立(いらだ)ってたせいだ」 「日照り続きで作物がろくに育たねぇ。きっと女王の悪行のせいだ」  こぞって不平不満を言い、女王への悪口はたちまち国中に広まった。  そうして女王は、稀代(きたい)の悪女とまで呼ばれるようになった。  日に日にふくれ上がる民の怒りは、ある時、ついに爆発した。  恨みを募らせた民が城へ押し寄せ、女王の首を()ねてしまったのだ。  稀代(きたい)の悪女と呼ばれた女王の御世(みよ)は、呆気なく(つい)えた。  めでたし、めでたし――
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