ムカーッ! 3:影(かげ)

15/16
前へ
/16ページ
次へ
「この十万円をわしが受け取ると、あの影は消えることになる。それでも、いいかね?」  僕は主人を見詰めて、 「そうなると、どうなるんですか?」 「あの女の子――つまり圭子さんは、元の神様に戻り、もう会えなくなるじゃろうな‥‥」 「えっ、どうして圭子という名を?」 「ホッホホ。わしは不思議堂の主人じゃよ」  と僕を見詰めるその目に、不気味な何かを見たような気がした。 「そうですか‥‥。でも仕方ありません。こうやってお金を出した以上、 僕の欲求を取る訳にはいきませんから‥‥」 「そうかね‥‥。分かりました」  僕は一瞬、ためらいながら、主人に十万円を渡すと、 「それじゃ、これで失礼します。どうぞお元気で」 「ありがとう。貴方も元気でな」  主人は店の奥へと消えた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加