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「この十万円をわしが受け取ると、あの影は消えることになる。それでも、いいかね?」
僕は主人を見詰めて、
「そうなると、どうなるんですか?」
「あの女の子――つまり圭子さんは、元の神様に戻り、もう会えなくなるじゃろうな‥‥」
「えっ、どうして圭子という名を?」
「ホッホホ。わしは不思議堂の主人じゃよ」
と僕を見詰めるその目に、不気味な何かを見たような気がした。
「そうですか‥‥。でも仕方ありません。こうやってお金を出した以上、
僕の欲求を取る訳にはいきませんから‥‥」
「そうかね‥‥。分かりました」
僕は一瞬、ためらいながら、主人に十万円を渡すと、
「それじゃ、これで失礼します。どうぞお元気で」
「ありがとう。貴方も元気でな」
主人は店の奥へと消えた。
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