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僕が東京の愛の巣を目前に、近くの道を歩いていたのは午後四時頃だった。
すでに圭子の姿は無いんだろうな‥‥と思いながら、僕は、ホッとして、ニッコり笑った。
「やっと、これで‥‥」
そして玄関まで来た時、近所の主婦が、
「あら、今ごろお帰りですか?」
その後ろには別の主婦、数人がいた。
「えー、ちょっと急用で‥‥」
すると突然、自宅のキッチンの窓が火を吹いた。
主婦たちが悲鳴を上げる中、僕は愕然とし、
「圭子ー! 大丈夫かー!」
ドアを開けると、すでに火の海だった。
僕は仕方なく、主婦たちと共に逃げると、スマホで救急に通報した。
やがて十台の消防車が到着し、けんめいに消火活動がつづけられた。
「そうか‥‥あの時‥‥僕が道を歩いていた時、圭子は僕の傍にいたんだ‥‥。それで、僕の言葉に怒って、この家に火を‥‥」
結局、僕の家は全焼してしまった。
――終――
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