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エピローグ ~2つの母心~
「南天はどうかしら?」
社務所の縁側に腰掛けて、ロングヘアを風になびかせた女性が大きなお腹を撫でながら話す。
「名前か?ずいぶん変わった…まあ、ないことはないか。神様も君が言うなら反対はしないんだろうしな」
お茶が入った湯呑を2つ、ゆっくりと運んできた朔ノ介が答える。
「ええ、いい名前だと思うわ。この子はあなたに似て力を受け継いでるみたい。だから...嬉しいけど心配でもあるのよ」
そう言って悲しそうに笑った。
まだ胎内にいる今でも2人には分かった。
生まれてからしっかり訓練すれば、この松名神社の宮司となることも十分可能な神気持ちだということが。
「にしても」
朔ノ介が背伸びをしながら努めて明るく言う。
「他にも草木や花の名前はたくさんあるのになんでまた…」
言われた彼女は社務所の向かい側にも植えられた南天の木を嬉しそうに眺めて口を開く。
「名前は一生一緒のお守りでしょ?最適だと思うの。だってね...」
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