1人が本棚に入れています
本棚に追加
気が付くと、目の前で少年が死んでいた。
次第に明らかになるさっきまでの記憶で、少年を殺した犯人が自分であることはすぐに分かった。
信じたくはなかった。が、鋭い爪のある私の両手にべっとりと付いている血が、少年のそれだと匂いが訴えていた。
少年は私の友だった。彼はここに来て、よく歌を唄ってくれた。そして今日も、少年は優しい歌を唄っていた。私は両目を閉じて、静かにそれを聞いていた。
その時、少年はふと私の首元に触れた。
触れるな。と散々言っていた首元に、だ。そこに触れられた私は、怒り狂って少年を一瞬の内に殺してしまったのだ。
私は恐る恐る、少年の頬にそっと触れた。あんなに温かかったそれは、氷のように冷たくなっていた。
後日、少年の住む人間の村の者が、私を遠くの岩牢に閉じ込めた。
人気の無い岩牢の中で私は、二度と人間と友にならないことと、決して誰にも首元に触れさせないことを誓った。
最初のコメントを投稿しよう!