逆鱗

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 気が付くと、目の前で少年が死んでいた。  次第に明らかになるさっきまでの記憶で、少年を殺した犯人が自分であることはすぐに分かった。  信じたくはなかった。が、鋭い爪のある私の両手にべっとりと付いている血が、少年のそれだと匂いが訴えていた。  少年は私の友だった。彼はここに来て、よく歌を唄ってくれた。そして今日も、少年は優しい歌を唄っていた。私は両目を閉じて、静かにそれを聞いていた。  その時、少年はふと私の首元に触れた。  触れるな。と散々言っていた首元に、だ。そこに触れられた私は、怒り狂って少年を一瞬の内に殺してしまったのだ。  私は恐る恐る、少年の頬にそっと触れた。あんなに温かかったそれは、氷のように冷たくなっていた。    後日、少年の住む人間の村の者が、私を遠くの岩牢に閉じ込めた。  人気(ひとけ)の無い岩牢の中で私は、二度と人間と友にならないことと、決して誰にも首元に触れさせないことを誓った。
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