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side-F
こういう日は、おれにとってすごく複雑な日だ。嬉しいとか楽しいとか、いい気分にもなれる日。そしてその分…己の醜さも再確認させられる日。
大切だけど、色んな感情が混ざり合ってとても複雑な気持ちになる日。
こんな日はいつも以上に楽しそうでカッコ良い彼が思いっきり見られるし、コレクションも増える。
だがその姿は、おれ以外の奴の目にも晒されるワケで。
「いけいけいけ…!いいぞいいぞっ!」
「よっしゃいける!澤今だ!!」
多くの歓声の中、パスッと気持ちの良い音が青い芝生に響き渡った。白いネットが勢いで揺れて、ボールを掴み損ねたキーパーの手は空を切ったまま。
まるでスローモーションのような、ほんの一瞬。
「ゴォーーール!!!」
「「「っしゃあぁぁ!!!」」」
ワァーッとあちらこちらから歓声が強くなり、試合を終えたチームメイトが一斉にゴールを決めた少年の方へ駆け寄ってゆく。
汗だくで泥まみれになりながら勝利の喜びを分かち合い、負けたチームとも握手をして互いの健闘を称え合っている。
青空の下。そこだけ見れば何とも爽やかな青春映画のよう。
「すごーい!勝っちゃったねぇ」
「ねぇあの子!あの背が低めの子、めちゃくちゃ活躍してなかった?ラストのとかすごかったし!」
「………」
「分かるー!顔は…遠くてよく見えなかったけど。カッコよかったよねぇ?イケメンだったらどうする?声掛けちゃう?」
「そうだね、ちょっと興味湧いちゃったかも」
「………」
青空の下、爽やかな青春映画…ねぇ。
今のおれの顔は多分、そんな映画には出演できないカオしてるんだろうな。
…やっぱり、嫌だなんて思っちゃうんだよなぁ。
そんなこと考える権利なんておれには無いだろうに。思うことは、止められない。
「あ、そろそろこっち来るよ!」
「ちょっと待って!確か背番号は…」
「おねーさん達」
「「は、はいっ!!!」」
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