僕の嫉妬と独占欲

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僕の嫉妬と独占欲

”先輩に付き合わないかって言われたんだ…” 「そうなんだ」 ”…どうしたらいいと思う?” 「それ僕に聞くの?」 ”ジンは…どう思う?” 「…いいんじゃない。彼氏欲しいって言ってたじゃん」 ”…うん。そうだよね” 「はいこれ。返すのいつでもいいよ」 「ありがとう。お茶くらい出すけど?」 「じゃぁちょっとだけ…!」  ずっと仲の良かった彼女を部屋にあげるのは、これが初めてではない。 「何飲む?」 「ジンが飲むやつと同じでいいよ」  もちろん”友達”という関係性だったけれど、僕と彼女はもう少し深い部分で繋がっているような気がしていた。 そう、恋愛感情が絡み合うような、特別な関係なんだと。 「そのDVD観る?」 「私はもう何回も観たやつだよ。それに…」 「何?この後予定でもあるの」 「うん、まぁ…」 「彼氏?」 「…うん」  それなのに彼女は違う男の恋人になった。思い返せば一度だけ引き止めるチャンスはあった。あの夜、僕がやめとけと言っていたのなら、彼女は素直に聞き入れていたのかもしれない。でもあの夜、君は僕に、一体どんな答えを求めたの…? 「じゃぁそれ飲んだら彼氏のところ行きなよ」  彼女は差し出したマグカップを受け取ると、ゆっくりとそのカップに視線を這わした。 「ジンいつもこのマグカップに入れてくれるね」 「自分以外のカップはそれしかないからね」 「そうなの?ね、じゃぁ今度お揃いの…」  そこまで言いかけて、彼女ははっとしたようにマグカップに口を付ける。 「お揃いのカップなら彼氏に買ってもらいなよ」 「う、うんそうだね。そうする」  あの夜。先輩に告白されたと相談してきた夜、迷っているような言い方に腹が立った。僕が止めなきゃあっさり付き合ってしまうし。彼女が何を考えているのかさっぱり分からない。 「ね、彼氏のどこが好きなの?」 「何急に…。ジンそんなのに興味ないでしょ」 「なんで?あるよ。教えてよ」 「…優しいし。それに…」 「僕だって優しいよ。なら僕のことも好きなの?」  僕の言葉に動揺したのか、握りしめられていたマグカップはカタカタと小さな音を立ててテーブルの上に置かれた。 「そりゃジンは優しいし好きだよ!でもそれは友達として…」  彼女を見ていると無性にイライラする。その瞳も、口から溢れる言葉ひとつだって、誰を想っているのか、明確なはずなのに。 「そっか」 「もう…今日ジン変だよ。私そろそろ…」  あの夜も腹が立って…今この瞬間も腹が立つ。僕は君の前では冷静でなんていられないのに。君は違うの?  立ち上がろうとした腕を掴むと、彼女は驚いた顔で振り向いた。 「ジン?」 「…僕のこと好きでしょ」 「え…」  何にこんなに自分がイライラしているのか、原因はよく分かっている。 「見てたら分かる。僕のこと好きなくせに」  驚いている彼女の肩を掴んで強引に唇を重ねた。 5ff6e919-aa4a-4ce6-a097-c507526105df 「ん…っ…!」  抵抗なんてさせない。…本当はこうされたいくせに。 「やっ…ふ…っ」  弱々しく抵抗を繰り返す彼女の腕を引き寄せて、何度も何度も唇を重ねる。薄く開いた唇に舌を差し込んで、小さく漏れる息までも全部奪ってしまうように。 「はぁっ…な…んで」  息を切らしながら口元を覆う彼女の顔を自分に向けると、縁に溜まる涙を堪えるように揺れる瞳は…じっとりと熱を含んでいる。  それは、僕に欲情している目だ。 「なんでは僕の台詞だよ。なんで好きでもない男と付き合うの?」 「…っ。ジンだって付き合えって…」 「僕のことを好きだと思っていたのに。それなのに、僕に相談してくるから腹がたったんだよ」  彼女は何か言いたげな顔をしながらも、僕の腕を振りほどいて鞄へと手を伸ばした。 「帰る…」 「あいつのところに行くの?」 「待ってるから。もう行く」 「僕のこと好きじゃないの?」    認めてしまえば楽なのに。僕の言葉に足を止めてしまう君は…僕を拒絶できるはずがないんだよ。 「…じゃぁジンは?私のことどう思って…」 「好きだよ」 「…っ」 「同じ気持ちだと思っていたのに。違うの?」 「う、嘘…っ、だってあの夜…止めてくれなかったのに…」 「僕に止めて欲しかったの?」 「私は…」 「もういいや…そんなことどうでも」  もう一度唇を重ねようと近付くと、涙に濡れた彼女の瞳は、欲情の色を滲ませて僕の瞳を誘っている。そうだよ。その瞳は嘘をつけない。  ほら…本当はこうされたいくせに。 「…ジン…私…」 「…もう黙って」  僕だけのものだと思っていたから、僕は…君が離れていくわけないとずっと思っていたんだ。 3ed3f8df-56f2-4a86-994a-63da74622648 「…彼氏待ってるね?」 「あ…やっ…ジン」  彼女の服をたくし上げて、直接肌に触れると白くて柔らかい身体が小さく揺れた。  ”友達”では触れることが出来ない、彼女のその場所に何度も指を這わす。 「ね…他の男に触られていたかと思うだけでおかしくなりそうなんだけど」  矛盾している。  他の男と迷うのなら、勝手にしろと思ったはずなのに。手元から離れてしまえば、自分のものをどこの誰かに取られたような気持ちになって、嫉妬でおかしくなりそうだった。 「ジン…待って…電話だけ」 「電話…?なんて言うの?今から違う男に抱かれるから行けないって?」  僕の言葉に悲しそうに顔を歪める彼女に体の奥がまた熱を持つ。ごめんね、こんな言い方しかしてあげられなくて。でもね…僕は君のその、僕のことだけで頭がいっぱいになっているような表情がたまらなく好きなんだ。 「誰に…抱かれたいのか言いなよ」 「ジン…お願い…電話…」  この状況で、まだ違う男のことを考える余裕があるんだ。聞きたい言葉が聞けないもどかしさに耐えきれず、ソファに押し倒した彼女に跨った。 「言えないならいいよ…分からせてあげるよ」 「ぁっ…やぁ…っ」  彼女の太ももを辿った指を強引に沈みこませると、部屋に小さく水音が響く。 「ね…誰に感じて濡れてんの?」 「んぁ…いや…ジン」 「…こんなになってんのに嫌…だ?」  指を動かすたびに漏れる音が全てを証明している。 「ぁ…んっ…」 「僕と…こうなりたかったよね?」  指の動きを速めれば、甘い泣き声に変わっていく彼女の嬌声に頭の奥の方がジリジリと痺れていく。 「…っん、…だった…」 「…なに?」 「ジンとっ…ずっと…こうなりたかっ…た」  やっと聞けたその本音に、熱を持った体が容赦なく君を求めているのに…まだ理性を保っているのか、彼女の腕が僕の腕を掴む。 「んっ…でもダメ…こんなの…」 「…だめ?なにが?」  さっきから彼女の甘い声に混じって鳴り響く携帯の着信音が、崩れゆく君の理性を辛うじて守ろうとしているの?まだ君は…僕でその全てが満たされていないんだね。耳が受け入れようとしない彼女の言葉も携帯の音も無視してベルトに手をかけると、固く閉じられていた彼女の目が僕の目を捕らえた。 「ジン…っ…別れるから!彼と別れるから…ま、待って」 「じゃぁ今別れて」  なり続ける携帯を手渡すと、彼女は首を横に振る。 「こ、こんな状況で話せないよ。ちゃんと…あっ…!」  抵抗する間を与えることなく彼女に自身を充てがうと、すんなりと僕を受け入れる彼女の体に溶けるように沈み込んだ。 「…っ…待ってなんてあげない」 「んゃぁ…っ…ぁ」  僕以外のことなんて考えなくていい。どうせ僕以外君には必要ないのだから。 「…はぁ…っ…好きだよ」 「ふ…ん…ぁっ」  泣き声混じりの喘ぎ声は…何故こんなにも僕を興奮させるのか。 「…こんな酷い男に抱かれて感じてるの?」  皮肉混じりでそう囁けば、彼女は小さく頷いた。 「…好き…っ…」  絞り出すように漏れた、背徳感や罪悪感を含んだその言葉…。理性を保とうとしていた彼女が、本能に支配された瞬間。 「も…一回…」 「ジンっ…好きだよ…好き…っん」 「…っは…君は…誰のもの?」  求めていたその言葉に熱くなる体がどんどんと深い快感へ沈んでいく。 「あっ…ゃぁっ…ん」  激しく動く僕に合わせて彼女の体も激しく揺れる。 「私は…っ…ジンのもの…」  その言葉を自分の中に飲み込みたくて、噛みつくように唇を塞いだ。 「んっ…ぅ…も…無理…」  唇の隙間から漏れたその言葉を最後に、彼女は僕の腕の中で意識を手放した。 「やっと僕のものになった…」  意識を手放し眠る素肌のままの彼女に毛布をかけると、僕の唇が弧を描く。  僕に愛されたまま気を失うなんて…。  感じたことのない優越感と支配感に胸の奥が満たされていく。 もう誰にも渡さない…。  彼女と過ごした熱くて甘い時間の余韻を邪魔するように鳴る携帯に手を伸ばすと、すやすやと眠る彼女の顔を見つめながら通話ボタンに手をかけた。 「…はい」  彼女はもう僕のものだ。
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