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ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!
怒り狂った猛獣遣いの鞭が、
ひっきりなしにライオン・・・俺の身体に脚に、顔を叩きまくり、大声で罵倒した。
「おめえはそれでも『百獣の王』か!!
これくらい余裕で飛べるだろ!!
何だその態度は!!震えてんなよ!!
おめえは『猫』か!!このサーカスは『猫
』は使わないんだけど?
ムカつくんだよ!!ゴルァ!!立て!!」
ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!
猛獣遣いは狂ったように炎に包まれた輪の中を潜らない俺のこめかみに、たてがみに、鞭を何度も何度も何度も何度も打ち続けた。
ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!
がおーーっ・・・がおーーっ・・・
気が違う猛獣遣いの打ち続ける鞭の痛みに耐えきれなくなり、俺は遂に悲鳴をあげた。
「泣いんのか?『百獣の王』!!甘ったれるな!!さっさとこの火の輪潜れ!!
さっさと潜んねぇと、今日も飯抜きだからな!!ゴルァ!!さっさと潜れ!!」
「あーーーーっはっはっはっはっは!!」
「ぎゃははははは!!」「はーっははははは!!」
俺の周りで夥しい笑い声が雨あられのように、醜態を晒す俺へと降り注いだ。
俺はサーカスに居る。
俺は『百獣の王』ライオンが故に、サーカスの見世物にされている。
屈辱と嘲りのこの爆笑の渦は、ヤケクソの勇気を奮い立たせた。
解ったよー!!飛べばいいだろ?!この赤々と燃える火の輪を潜ればいいんだろ!?
俺は巨大な台に飛び乗ると、思いっきりピョ~~~~~~~ン!!と火の輪くぐった。
ボオッ!!
しまった!!たてがみに火の輪の炎が燃え移った!!
熱い!!熱い!!熱い!!熱い!!助けて!!助けて!!助けて!!助けて!!ふう!!ふう!!ふう!!ふう!!
俺は狂ったように地面を転げ回って、頭のたてがみにの炎を揉み消した。
俺のフサフサとしたたてがみには、忽ち焦げてチリチリの縮れ毛になった。
「あーーーーっはっはっはっはっは!!」
「ぎゃははははは!!」「はーっははははは!!」
俺のションボリした態度に、観客の爆笑の渦は更にボルテージをあげた。
俺のたてがみに火が着いて苦しんでるのを、この観客は嘲笑ってるのか?!
悔しい・・・屈辱・・・チクショウ・・・チクショウ・・・
俺は『百獣の王』じゃない・・・ピエロだ・・・俺は道化師のピエロだ・・・
そんなピエロが突然目の前に躍り出て、おどけて殴って蹴ってきた。
「どうだ!!人間は動物より偉いんだ!!」
と言わんばかりに・・・
ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!
今度はピエロが猛獣遣いから鞭を奪って、俺に鞭を打ち続ける!!
おどけて笑いながら・・・!!
痛い!!痛い!!もうやだ!!もうやだ!!
俺は毎度、このサーカスの演目を繰り返し繰り返し演じている。
繰り返し、繰り返し、今回も。
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