三章 苺タルト

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「いいねぇー、いける口だね」  そ日本酒を頼んだだけで判断をするのもどうかと思うが、俺に関しては当たっているので笑顔で肯定する。 「通政君は謎が多いのが魅力だとは思うんだけどさ、一つだけ聞かせて」 「何ですか?」 「結婚してる?」 「してませんよ」 「それはよかった。変な意味じゃないよ。今度うちのイメージキャラクターになって欲しいんだけどさ、結婚してるとね、ちょっとターゲット層とずれちゃうなあって思ってたから」  そんなものなのだろうか。仕事は嬉しいがイメージキャラクターは契約期間が長い。あとでマネージャーに言って断ってもらおう。 「俺もしてませんよ!」  アイドルもどきが男の後ろからひょこっと顔を出してアピールしてきた。男は眉を八の字にしてあからさまに困った顔をして見せる。 「君は、そうだねえ。女性関係が心配だからねえ」 「そんな心配は入りませんよ! 彼女もいませんし! 通政はいるけど」  昼に電話で話してた女は何だったんだ。  癪に触るが、元から断る話だ。こいつに話を合わせてやろう。 「いますよ」 「カッコいいから当然だろうけどねえ。お相手はこの業界の人?」 「違います」 「そうか。なら安心だな」 「別れの危機ですけどね」 「えっそうなの?」  俺をずっと見ていた男が後ろを向いてアイドルもどきの方を見る。初めて視線を合わせてくれた嬉しさからかアイドルもどきは得意げに話す。 「一ヶ月顔も見てないんですよ。遠距離でもないのに」 「それは大変だねえ。忙しいとはいえ、彼女も寂しがっているだろう?」 「いや」  特に寂しいとは言われていないし会おうとも言われていない。俺の方だけ会いたがっているのでは? とまで思ってしまう。 「……それは、心配だねえ」 「でしょ?」  訝しげに俺を見る二人。何を意図しているかはわからないが、ここにきてお前らの意見が一致するとは。 「通政君、彼女の容姿は、その、可愛いかい?」 「? 可愛いというよりは……」 「なになに?」  アイドルもどきに注意深く聞き耳を立てられる。面白くなくて勿体ぶってやる。
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