三章 苺タルト

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「入ってください」 「嫌だ」  お風呂を沸かして彼の服も用意した。なのに彼は入ろうとしない。 「うーん、どうしよう」  このままだとお湯が冷めてしまう。  目を離したら私が帰ってしまうと言って離してくれない。そんなことはないと否定しても信じてくれない。 「……椿も入るなら入る」  「そんな子っ」  子供みたいなこと言うなんて。通政さんらしくない……っていうのは私の思い込みだと自分に言い聞かせる。  私の腕を掴む彼の手が酷く弱々しい。私が通政さんをここまでしてしまった。 「なら……一緒に入ったり……します?」
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