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鎌切
一日目。
そいつは突然公園に現れた。青い色のカマキリだ。普通のカマキリより一回り小さかったが、その分綺麗だった。
二日目。
カマキリがバッタを捕食しているのを見た。心なしか、カマキリは喜んでいた。バッタを平らげると、一日目のように小さく土が盛られた場所に鎮座した。
三日目。
カマキリは、なにやらしっぽからネバネバしたものを吐き出していた。それがなんなのかは分からなかったが、とりあえず気持ち悪かった。色は綺麗なのに。
四日目。
カマキリはいつの間にか、たまごを生んでいた。カマキリの体同様、青かった。真っ青で、本当に生まれてくるのか心配になった。
五日目。
カマキリの子供が生まれた。蚊ほどの大きさだが、親譲りの青さだった。何匹かが自分の方に寄ってきて、手によじ登った。とっても可愛かった。
六日目。
カマキリの子供がバッタを協力して運んでいた。手伝ってあげると、カマキリは自分に瓶の欠片を持ってきた。宝物なのだろう。とっておく。
七日目。
その日。カマキリは全部が死んでいた。近所の子供が遊んでいるなと思ったら、カマキリを踏み潰していたのだ。可哀想に。せめて安らかに眠ってくれと、墓を作った。
八日目。
いつもの癖でカマキリがいつもいたところをみたが、墓以外なにもなかった。植物の青い芽を除いては。
九日目。
青い芽はすくすくと育ち、一晩で実のようなものを実らせた。もうだいぶ熟れているようだ。
十日目。
実が落ちる瞬間に立ち会った。割れた実の中から出てきたのは、あの青いカマキリだった。自分は再開を喜び、すぐにバッタをとってきて、そいつにやった。しかし、一口噛ると、もう食わなかった。
十一日目。
おかしい。今までのカマキリよりも明らかにでかい。普通のカマキリの1.5倍ぐらいの長さだ。しかし、成長を感じることができる、とても嬉しかった。
十二日目。
ついに小学生ほどの大きさにまで成長した。大きな鎌は、今までは可愛く思えたが、これほどの大きさになるとすこし怖かった。
十三日目。
もう自分よりも大きく成長してしまった。今まで全く動かなかったカマキリは動き出した。その行き先は、子供達の遊び場。遊具がある辺りであった。カマキリは自身の鎌をギラギラと光らせて子供達に向かっていった。自分は、それを止めようとはしなかった。
ただ、ああ、綺麗だなと思った。あの紫色は。
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