延々の命

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 あれから、阿波は砂のように消えた。服も消えて、残ったのはブレスレットだけだった。命と才能を同時に使用したからなのか…あの短い時間を忘れたかのように、いつの間にか人集りが消えていた。  バイオリンをケースにしまう。  夕日を眺めて、河原を後にする。  早く帰って、母さんと話そう。  俺が思ってたこと、全部言ってから、阿波について話そう。  逸話の少女はいたよって。  俺の歌は、きっと強い感情があれば上手くなるよって。  金属のブレスレットをはめる。  「ってこれ、まさか、金?」  てっきりメッキかと思っていたが、どうやら本物みたいだ。流れてはめたけど落とすと怖いから家に飾っておこう、と鞄にしまう。  …いやでも、もう少しだけ、つけておこう。  夕日は傾く。  けれど、そこから見えたのは、満天の星空だった。  ~おわり~
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