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「お待たせ」と、ザックがグラスを差し出す。氷がカランと音を立てた。
いつの間にかザックはジャケットを脱いでいた。
ぴったりと体のラインに沿うように仕立てられたドレスシャツ越しに、ザックの裸を想像して鼓動が早まる。それをおくびにも出さず、ジーンは「ありがとうございます」と礼儀正しく微笑んで、差し出されたグラスを受け取った。
長い脚を投げ出して、ザックが隣に腰を下ろした。はじめて曝け出された寛いだ姿に、どうしてもこの先の行為――つまり、もっとあられもない姿を曝け出す行為――を意識してしまう。
ザックが自分の水割りのグラスを口に運ぶ。ジーンも倣ってグラスを傾けた。唇をウイスキーで湿らせながらも、隣の男の存在を強く意識する。
ジーンがそっと目線を上げると、食い入るようにこちらを見つめるザックと目が合った。
端正な顔が近付いてくる。
グラスをサイドテーブルに置き、ジーンは隣の男に体をすり寄せた。
しばらく、鼻先がぶつかりそうな距離で見つめ合った。ジーンが目を伏せると、それが合図のように唇が重なる。ザックは安堵の息を吐くように、それでいて満足げに唸ってジーンの体を抱き寄せた。
ジーンも彼の背中に腕を回し、なめらかなシャツの上にてのひらを滑らせる。
昼間より薄くなったトム・フォードが香った。タバコバニラ。好きな匂いだ。それからアフターシェイブローション。それから今飲んでいるウイスキーの香り。
ザックはジーンの古臭いジャケットを脱がせ、ベルトからシャツの裾を引き抜いた。スラックスを脱がしやすいよう腰を浮かせて協力しながらも、ジーンも負けじとザックのベルトを外し、前を寛げた。すでに湿った下着の上から熱の塊をそっと撫でると、ザックが低く呻いた。
ジーンはうっそりと笑って提案した。
「ベッドに行きません?」
「賛成だ」
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