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1. メイ
「今夜8時、大切なお知らせがあります。」
推しがSNSで発信したコメントに、あたしは目の前が真っ暗になった。
大切なお知らせ。そんなの、引退か結婚に決まってる。じゃなきゃ、真剣交際。ましなヤツで、活動休止。どれも、あたしには受け入れられない。
それはつまり、死刑宣告だ。
ダメだ……もう、生きていけない……
あたしは仰向けにベッドに倒れた。スマホを持った手が、シーツにぽすんと落ちる。深く長いため息が、カリフォルニアの乾いた空気に馴染んで消えた。
日本の午後8時なら、こっちは夜中の3時。そんなお知らせ見たくないけど、見ないでいられるわけがない。
きっとあたしは午前3時、このベッドの上で死刑になるんだ。誰にも知られずに、一人ぼっちで。
アニメオタクの部屋みたいに、天井にも推しのポスターが貼ってあれば、少しは癒されたかもしれない。いや、泣いちゃうかな。こんな気持ちで彼の笑顔を見たら、心が痛すぎる。
ねぇ、推し。お願いだから、誰かのものにならないで。あたしの日常から、いなくならないで……?
視界のにじむ目を閉じる。まぶたに押し出された涙が、顔の横に流れ落ちた。
なぁんだ……
ポスターなんかなくても、おんなじじゃん……
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