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2. 真理子
「結婚します。相手は、一般人の女性です」
私はその記者会見を、自宅リビングのテレビで観ていた。
「速報! 俳優坂口運春(28)電撃結婚!!」
右上にそうテロップの出ている画面で、私の恋人は、何本ものマイクを前に微笑んでいる。フラッシュでチカチカする四角い枠に目を向けたまま、私は彼にもらったダイヤの指輪を、指先でそっとなでた。
「お相手はどんな女性ですか?」
「出会いはどちらで?」
「プロポーズの言葉は?」
運春は端正な顔に幸せそうな笑みを浮かべ、記者の質問に答えていく。
彼曰く、結婚相手は「都内の語学学校で働いている三つ歳下の女性」。
それは確かに私のことだけど、ブラウン管を通すと現実味がまるでなく、他人事みたいに聞こえる。ちょうど、彼が出演したドラマで、ヒロインの女性に愛を囁いているみたいに。
「おめでとう、真理子」
隣で一緒にテレビを見ていた姉が、イナバウアーよろしく背中をそらせて伸びをして、はぁーっ、と長いため息をついた。
「本当に結婚するのねぇ、なんだかまだ信じられないわ」
「うん、私も」
「まだドッキリを仕掛けられてる気分。妹が芸能人と結婚するなんて、考えたこともなかったわ」
「仕方ないじゃない、俳優だなんて知らなかったんだもん」
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