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姉も私も、芸能界に疎い。父親の仕事の都合で海外で育ったために、日本の歌番組やドラマを観る機会がほとんどなかったからだ。
運春と初めて会ったのは、私が講師をしている英会話スクールの体験入学だった。黒縁眼鏡と地味な服装で現れた彼を、正直言って、カッコいいなとは思ったけれど。まさか、今をときめく人気俳優だとは思わなかった。
入門クラスでは定番の自己紹介。職業を聞かれて口ごもった彼に、だから私は、的はずれな説明をしてしまったのだ。
「日本人は、〇〇社に勤めています、と、会社名を名乗りがちです。でも英語で仕事を聞かれた時は、職種で言った方がいいですね。技術職ならengineer、経理ならaccountantという感じで」
運春は目を丸くした後、おかしそうにくつくつ笑った。そんな姿を見て、私は内心「この人もしかして、ヤクザかホストかしら」と思ったものだ。彼はそれが新鮮で居心地が良かったらしく、私の個人クラスを予約するようになったと言っていた。
あれから一年半。驚くことはたくさんあったけれど、まさか本当に運春と結婚することになるなんて。私自身が一番、びっくりしてる。
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