3. メイ

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3. メイ

「もう死にたい」  推しの重大発表からニ日。あたしはそれが口癖みたいになって、気がついたら口からこぼれてしまっている。学食(カフェテリア)で向かいの席に座った咲良(さくら)は事情を知っているから、白々しい慰めを口にせずにマフィンのラップをむいた。 「だからさぁ、推すなら二次元にしなってば。三次元の男と違って現実(プライベート)に傷つけられることもないよ?」 「推しが最終回で結婚して、子ども抱いてたって泣いてたの、誰だっけ?」 「原作ではあんなシーンなかったもん。アニメで勝手に加えられた演出だから、あんなのもう気にしてない。それに、彼は過去の美しい思い出よ。今イチ推しのロイド様は女嫌いだから、結婚の心配もないわ」  咲良はそう言って、スマホに保存した猫耳(ケモミミ)の美青年の画像を見せてきた。彼女の推し「ロイド様」はオンラインゲームのキャラクターで、白虎の化身らしい。 「かっこいいね」  あたしが褒めると咲良は嬉しそうに目を細めて、スマホを胸に抱いた。 「でしょう? 最高に麗しいでしょう?」 「あたしも二次元に推し作ろうかな」  咲良に合わせて、あたしは心にも無い台詞を吐いた。  現実に存在しない、獣人の、ゲームキャラクター。いくらカッコよくても、どうして架空の存在にそれほど夢中になれるのか、正直あたしにはよく分からない。
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