目覚まし時計のゴングが鳴った

1/4
前へ
/15ページ
次へ

目覚まし時計のゴングが鳴った

星が瞬く時間に終わりを告げ,空にうっすらと太陽の片鱗を現し始めてきた。 新聞配達のバイクを走らせる排気音と,朝を知らせる小鳥達のさえずりが外から響いてくる。 街の一角にある,ファミリー向けのアパート。その一室で,毎日の疲れで寝落ちした1人の戦士・・もとい,1人の主婦が眠っている。 結婚して5年。 3年前に愛息子が誕生してから,子育てと日々の生活に追われ,毎日が悪戦苦闘している。 身なりなんて,気にしていられない! 結婚する前は,それなりに名の通った出版社に勤務し,作家が書き上げた原稿の受け取る役割の,下っ端編集者だった。 元々,小説を読むのも創作するのも大好きで,小説家になるのを目標にしていた。 担当する作家さんたちは,書くジャンルが違えど個性的な人たちばかり。最初は煙たがれていたけれど,ひと言二言会話をする間柄になり,次第に家族のような親近感すら感じていた。 親身になっていた作家さんの1人から男性を紹介され,気の合った2人が自然と結ばれ,結婚するのに時間はそう掛からなかった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加