ケンちゃん

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 重い瞼を開けると、そこは見知らぬ場所だった。ベッドと机、クローゼットがあるだけの簡素な部屋だ。妙な解放感に自分の身体を見ると、一糸纏わぬ姿でベッドに寝かされていた。私は驚いて飛び起きる。 「な、なんで……?!」 「あ、起きた?」  声の方に顔を向けると、そこには『ケンちゃん』がいた。彼も裸だ。 「アイちゃんの初めて、もらっちゃった」  嬉しそうに笑う男に、血の気が引いてゆくのを感じる。 「あはは、なんてね。ただ服を脱がしただけだよ。顔を青くしちゃって、かわいーね」  男は私の頭を撫でる。私は嫌悪感から、その手を振り払った。私から拒絶されても、『ケンちゃん』は笑顔を崩すことはない。 「僕を拒絶しても無駄だよ。ねえ、これ見て?」  『ケンちゃん』がスマートフォンを取り出して画面を見せる。そこに映っていたのは、裸の私と彼がベッドで寝ている写真だった。 「これ、他の人が見たらどう思うだろうね」 「や、やめて……!」  私はスマートフォンを奪おうとするが、彼はあっさりとそれをかわした。 「バラされたくなかったら、僕の言うこと……聞けるよね?」  目の前が絶望に染まる。項垂れる私に、『ケンちゃん』は口元を歪めた。 Fin.
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