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夫はシャッター音で顔を上げて怒った。
真面目に謝っているのに!って、ますます呆れて、動画に切り替えた。
「真面目に謝るの当たり前だと思うんだけど?あのさ、土下座、これもね、もっと早い段階、例えばまだあなたが好きで私に悪いとこがあるからなのかなとかどうしたら別れてくれるんだろうとか、考えている時にされたら別れてくれたらやり直そう、だってここまでして謝ってくれたんだからとか思えると思う。でもさ、もう遅いんだよね。私は自分が悪いんだと思って悩んで、食事も食べれなくなって寝れなくなって、それでもあなたは気付かずに女の証拠を残して行くし、気持ち悪くなっていってきますと言われただけで女のとこに行くんだねって考えると吐いちゃうし、帰って来てただいまとか言われても女にも言ったんだよねとか思うし、その辺りでもう突き抜けちゃって堪忍袋は切れちゃったんだよね。」
「もう怒ってない…って事?」
おずおずと夫が聞く。
「うん、どうでもいい。娘の父親としてまともなら良いと思ってた。娘との約束さえ守れないならいらないの。いない方がまし。心配だったけど沙知も平気みたい。いつも沙知が寝てから帰ってたもんね?時々会えればいいって。」
「それは二人の為に仕事を…「違うでしょ?出張と言いつつ女と温泉。残業と言いつつ女の家でしょ?面倒だから嘘はやめようよ。あんたに500、相手の女に300の慰謝料、払う目処が出来たら教えて。そしたら離婚届出すから。弁護士に相談するならしていいし裁判したいならご自由に。養育費は月5万、これ相場だって。普通の会社員の、だから負けないし振り込まれなかったら給料差押えするから、よろしくね。それと女に言って。自分でお金払ってねって。あなたが払ったらすぐ分かるから、その場合、払えない判断をして親御さんに立て替えて頂きに行くからって。実家の住所知ってますからご心配なくって伝えてね。」
今までの鬱憤を晴らすように私は息を吸うのも忘れて一気に話した。
そして顔面蒼白の夫の顔をズームした。
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